聴覚障がい者の人権を尊べ

(東奥日報新聞「明鏡欄」掲載:2023.7.26)
 

  7月9日の東奥日報紙に「聴覚障害12団体災害支援 広がる活動、孤立解消 全国47組織調査」という見出しの記事に、一瞬目を疑った。「2団体は(災害支援)活動への参加を行政側から断られたことがあると回答した」とあったからだ。
  聴覚障がい者が不自由な生活を強いられるのは、健常者用のフィールドで暮らさざるを得ないからだ。彼等は「障害を乗り越え、震災や豪雨といった災害時に何かお手伝いしたい。ボランティアを通じて理解を深めたい」というのに。
  ところが、行政側はこの高貴な精神を受け止められない。聴覚障がい者だという一事をもって、彼等の能力が低いと評価していないだろうか。「邪魔」あるいは「足手まとい」と考えているのではないか。だとすれば無知、偏見、不安、差別という流れの典型例である。
  行政サービスを提供する側の人権意識の低さ、学習不足が疑われる。行政でこのレベル。一般人の理解はさらに遠いのは自明の理。聴覚障がい者は共生社会の実現、つまり、完全平等社会を望んでいる。そのために人権の主張は重要であり、人権の学習は欠かせない。行政側が断る理由をしっかり聞いてみたい。