逸失利益の判決に納得いかぬ

  (毎日新聞「みんなの広場」掲載 : 2023.3.11)

  聴覚障害のある11歳の女児の死亡事故を巡り、遺族が運転手等に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は約3770万円の支払いを命じた。女児が生涯得られたはずの収入「逸失利益」について、全労働者の平均年収の85%に相当すると判断した。これは聴覚障がい者の労働価値は健聴者に劣るという「差別」を認めたといえ、憤りを感じる。
  判決は、女児は幼少時からの発音の練習の結果、長文での会話も出来る様になっており、「将来さまざまな就労の可能性があった」とした。しかし、一方で「就労の上で他者とのコミュニケーションが制限されることは否定できない」とも指摘し、逸失利益を健聴者と同等にはしなかった。
  聴覚障がい者へ責任転嫁するのは理不尽ではないか。仮に、聴覚障がい者の労働価値が健常者に比べて低いとするなら、それは健常者が多数の社会の中で困難な労働を強いられているからだ。責任は聴覚障がい者が負うべきものではない。社会全体で負担すべき事柄である。

以 上