介護施設へ入所したくない


  介護施設、他人事ではない年齢になった。そんな中、「人の世話をするのが好きだから介護施設で働きたい」という若者の声を聞いた。
  私は、この声に不安を抱いた。介護施設と入所者との関係を、世話をする世話をされるという関係に位置づけていると映ったからだ。果たして、これは両者の健全な関係なのだろうか。
  思うに、「世話をする」はとかく「してあげる」という発想に繋がりやすい。その結果、介護施設のスタンスは集団一律の対応が当たり前、個別具体的な対応は「特別扱い」として認めない。さらに、担当者の底意に優生思想的な考えがあれば不安はさらに募る。虐待である。
  確かに、介護施設が入所者を初めて見るときは要介護者としての老人の姿である。しかし、人それぞれに長い人生の歴史がある。この視点に立てるか否か、介護者と要介護者との関係に大きな影響を及ぼすと考える。つまり、この視点の強弱が「世話をする」意識の強弱として表れると推察する。
  大島寿美子氏は著書「絆を築く技法ユマニチュード」で「してあげる」ではなく、「自分でするのが難しいところをお手伝いする」意識の重要性を強調する。これは、憲法が保障する「個人の尊重」(13条前段)の体現でもある。