スポーツ教育に欠かせない「聴く」技術

  私は、スポーツ教育に一抹の不安を感じていた。部活の成果によってマウンティング的思考、つまり優生思想的考えを満たそうとする顧問や親が後を絶たない様に思えるからだ。
  孫は聾学校高等部2年生。全国障害者スポーツ大会派遣選手陸上競技強化練習に参加。帯同し、見た光景はその不安を一掃させるものであった。正にアスリート達が主役であった。選手に寄り添う指導。つまり、「聴く」ことを重視する指導である。これは、体罰や恫喝や理不尽な指導とは対極にある。想像力と適切な質問がものをいう世界である。
  私は、この主役の体験は貴重であると考えている。後々の人生に大きな影響を与えるに違いないからだ。
  例えば、社会の中でより良く生きていける様にする為に欠かせない「自律心」の獲得である。「自律心」とは、自ら考え、判断し、決断し、行動する。その結果については責任を取る、という構図をいう。
  次に、自分は自分で良いんだという、他人と比較しない「自信」の獲得である。
  スポーツは生涯を通じて、する、観ることに価値がある。スポーツ教育の重要度は高まるばかりである。
  ちなみに、障がい者はなぜ不自由な生活を強いられているのか。健常者用のフィールドを強いられているからである。これは、障がい者問題を考える際の原点である。だから、「かわいそう」は差別である。