寄り添うことは難しい
(東奥日報新聞「明鏡欄」掲載:2021.6.7)
以下は、JAL客室乗務員が書いた本の中からの引用である。「暴力団組員風の乗客が禁煙席で喫煙を始めた。ところが、客室乗務員は『ここは禁煙席となっております。喫煙をやめてください』とは言わない。『禁煙にご協力ください』と、乗客に寄り添う対応を採った。相手は喫煙をやめた」
確かに、管理することは寄り添うことに比べ楽である。「否定後」を多用していれば済むからだ。しかし、管理を強調すれば管理される側は決して心地よいものではない。客室乗務員が「管理」を優先していれば、ことはスムーズに運んだかは疑問である。
ところが、寄り添うことは難しい。相手が千差万別であるからだ。だが、不透明、不確かな時代、そして長寿社会である。「個人の尊厳」を貫くため、寄り添う力の必要性は増すばかりだ。対極にあるのが「今だけ、金だけ、自分だけ」が良ければいい、という話である。
私は、寄り添う力を身に付けるため「自己肯定感」、ぶれない「軸」を持つことが大事だと考えている。ちなみに自分は公平を「軸」に心がけている。「管理」は手段であって目的ではない。いつの間にか手段が目的化した時、目的は後退する。