青森月見寮創始者小畑忠一理事長を偲ぶ


 知的障害者を対象にする「青森月見寮」創始者小畑忠一氏の死亡を最近知った。「思いやり」を経営理念とし、その実践を一貫して貫いた方であった。
  小畑さんが月見寮を立ち上げた動機は、知的障害を持つ娘さんにあった。知的障害児をテーマに、話題になった映画「筆子・その愛」。その筆子氏に話を伺いに行ったという。
  小畑さんと初めて接したのは、私の従姉が入寮することになった時である。従姉は幼少の時から私達家族と一緒に暮らしていた。そんな中、予防接種事故で知的障害者になる。小学校6年生の時である。知識のなかった家族には、損害賠償請求すら出来なかった。
  従姉は、月見寮創設時に入寮、死亡するまでお世話になった。その間、スタッフの方々の入寮者に対する寄り添う姿勢は、とても感銘深かった。それは、施設の経営理念である「思いやり」がスタッフ一同に浸透している姿であった。
  社会の構造は、健常者中心に創られている。知的障害者が社会の中で不自由な生活を強いられているのは、彼等には何ら責任のないことである。
  長寿社会、不透明、不確かな時代、内面的価値、つまり愛情、共感、信頼等が評価される時代になった。小畑忠一氏の経営理念である「思いやり」がより一層光を放つ時代が来た。ご冥福を祈る。