利己主義者の感染力
利己主義と個人主義。個人主義は「他人を押しのけてでも自分の利益を守ろう」という利己主義とは違う。むしろ逆で、各個人は平等に最高の価値を持っておりわけですから、誰もが常に他人の立場に配慮しつつ、独立した個人として尊重し合わなければなりません(伊藤塾塾長・弁護士伊藤真寄稿文より)。
「今だけが、自分だけ」良ければいい。個人主義と真逆の方向である利己主義は人の幸せには貢献しない。ところが、人はなぜか利己主義者に感染しやすい。
頼みもしないことを率先してやる。一見利他的に見えるからである。しかも、笑顔で近づいてくる。「自律心」の弱い人間に感染力が強い。その為、感染の拡大が懸念される。
利己主義感染予防のため、利己主義者の特徴を挙げてみた。
一つ目は、常に何かに怯えていることだ。自分の立ち位置が他人の評価にかかっているからだ。これは、自分に「自信」のない人達の特徴でもある。自分に「自信」のある人は、他人の評価は気にしない。評価する人、人それぞれであるという認識に立っているからだ。しかも、彼等は自分と人とを比べる様なこともしない。
二つ目は、「公平」「平等」という概念に価値を置かないことだ。つまり、他人の評価を気にするあまり、公平という価値が見えなくなる様だ。行動基準は善悪ではなく、損得が優先しがちである。
三つ目は、「自律心」とは無縁であることだ。その結果、教訓と感動の場を失い、孤立感を深めることになる。その為、優生思想的な考えに縋り付く傾向が高い。
四つ目は、利己主義というウイルスは、「自律心」の鍛えられている人を避けることだ。
頼みもしないことを率先してやる。これが利他主義か、利己主義か。判断するには「自律心」という物差しが効果的である。「自律心」は、人が社会の中でより良く生きていける様にする為の道具であるからだ。
利己主義の感染力は強まっていないか。
強まっていると見る。理由は「自律心」脆弱の裏返しである。学校が、家庭が「自律心」の価値を重視しているとは思えない。さらに、格差社会の拡がりが親の不安を強める。子どもがやることを親がやり、親がやるべきことを親はやらない。これでは「自律心」の萌芽さえ難しい。
しかし、不確か、不透明な時代である。しかも変化のスピードが速い。加えて長寿社会である。「自律心」の重要性は増すばかりである。
利己主義者の恩恵を受けた輩は、利己主義者の加担者である。「今だけが、自分だけ」良ければいい。そのツケは覚悟すべきである。これが人生の分岐点にならないことを祈りたい。
以 上