元エリート官僚(76)息子(44)を殺害

  加害者はエリート中のエリート官僚である。加害者は、レースの様な人生を歩み、優生思想に浸ってこなかったろうか。仮にそうだとすれば、「他人の力を借りる力」は一般人に比べ弱いことが考えられる。他者に相談するなど「優生思想」が許さないからだ。その一方で自ら解決する能力もない。
  家庭内暴力が始まったのは、被害者の思春期と重なる。暴力は母親に向かう。その際の判断基準は、なんとしても暴力を防止しなければならない、という「暴力阻止」にあったはずだ。なぜ暴力を振るうのか、という点については盲目であったに違いない。しかし、この「なぜ」の有無が負のスパイラルに巻き込まれるか否かの分水嶺である。
  「子どもは受け入れて貰ったと感じることで初めて優しい気持ちや生きる力が生まれる」。これは伊藤塾(塾長伊藤真)のロビーに掲示されていたものだ。
  加害者の言動を報道で知る限り、「子どもに寄り添う」ことを指示・強制と勘違いしている節がある。
  類似事件があった。生徒達から慕われていた教師が命乞いする我が子を殺害した事件だ。本件は、子どもに寄り添うことの難しさをまざまざと見せつけた事件である。

  以 上