「自律心」という言葉を知らない

 以下は、千代田区立麹町中学校長工藤勇一著「学校の『当たり前』をやめた」の一節である。

  「学校は子ども達が、『社会の中でより良く生きていける様にする』ためにあると考えます。
  その為には、子ども達には『自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する資質』すなわち『自律』する力を身に付けさせていく必要があります。
  社会が益々目まぐるしく変化する今だからこそ、私はこの『教育の原点』に立ち返らないといけないと考えています。」

  私の周りの人々は100%近くこの言葉を知らなかった。殆どの人は、この言葉に無縁に生きているということになる。このことが、私達の日常生活に一体どの様な影響を及ぼしているのか。思いつくまま並べてみた。
 ・主体的に生きようとしていない。
 ・問題提起し、解決する能力が育まれない。
 ・民主主義が機能しない。その結果、人権保障が遅々として進化しない。
 ・「自信」を醸成する萌芽が出ない。反面、他者と比較する人生観が萌芽する。
 ・「みんな」という言葉に弱く、その反動として「みんな」が闊歩する。
 ・多角的視点が持てない。
 ・手段が目的化する傾向を強める。
 ・「聞く」ではなく「聴く」力が育まれない。
 ・属性に縋り付く傾向を強める。例えば、元○○○○。
 ・プライドの高い人ほど、相手のプライドを認めない。
 ・人の力を借りる力が育たない。
 ・「愛情」という力が育たない。寄り添う力が育たない、と言い換えることも出来る。
 ・定年は自由を手にするが、その一方で進路を見失いがち。しかも、手に入れた自由を使いこなせない。これは、老後不安の最大の要因と
  見ている。
 ・不安は群れる傾向を強め、一瞬の癒やしを与える。が、不安解消には繋がらない。
 ・群は冷静な判断力を奪い、不安と群の悪循環が始まる。

 でも、殆どの人は主体的に生きようとはしない。その方が楽だからだ。「自律心」という言葉を殆どの人が聞いたことがないというのも得心である。
 だが、ツケは間違いなく知力、体力が弱まった老後に襲いかかってくる。「自律心」は受験力、学歴、職歴からは身に付かない。学校教育の改革が急がれる。

  以 上