聾学校へ通う孫に学ぶ
孫は、聾学校へ通学する中学部3年の男の子である。通学にバスで片道約1時間を要する。校内では卓球部に所属。校外では週一回空手道場へ通う。
私は、孫の通知表を見たことがない。見たいとも思わない。孫の成長ぶりは運動会、青聾祭、卓球の対外試合等を通じて良く分かるからだ。今回のインタビュー申し出が加わり、その感を一層強くした。また、青森市中体連入場行進参加者5名の行進は、大会長がわざわざ一言付け加える程であった。これは、聾学校の教育、つまり少人数教育の成果と考えている。
ところで、近隣に住んでいる孫から急遽インタビューの申し出があったのは夕方7時頃である。私の自宅で約1時間余りに及んだ。インタビューの内容は次の様なものである。
・仕事の内容について
・大事にしていること
・大事にしている言葉
・皆に伝えたいこと
・好きなこと
・世界を旅して思い出に残っていること
・78歳を迎え、これからの生き方
私が取材で孫に強調したのは、「自律心」の涵養とアグレッシブに生きることであった。人と比較しない。「自律心」の涵養を強調したのは、社会の中でより良く生きていける様にする為には欠かせないと考えているからだ。アグレッシブな行動は心を変えると考えているからだ。また、自分に自信がないと人と比べてしまうからだ。
以下、大事にしている言葉と世界を旅して思い出に残っていることをまとめてみた。
【大事にしている言葉】
・あす死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べよ(ガンジー)
・心が行動を決め、行動は心を変える。
・事実は変わらないが、評価は変えられる。
・あすの自分は今日造る。
・成功することは素晴らしい。人間成長することはもっと素晴らしい。
・一人一人の力は微力だが、無力ではない(池田香代子文学家・翻訳家)。
・過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目である(ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領)。
・勇気がなければ、他の全ての資質は意味をなさない(チャーチル)。
・楽あれば苦あり。苦あれば楽あり。
・花は一輪でも美しい。でも花束は、形や色の違った花々がお互いを引き立て合っているからもっと美しい。
・国や権力は批判の対象であり、そうでなければ民主主義は成り立ちません。しかし、人間の信頼の対象です(伊藤塾塾長・弁護士伊藤真)。
・和して同ぜず。
【世界を旅して思い出に残っていること】
・多様性を認める精神の重要性。
・韓国法曹界視察に参加。懇親会に弁護士の他に検事、裁判官が参加していた。
英語、日本語韓国語が混じり合った中での宴席は初体験であった。その中に、韓国ドラマ「冬のソナタ」の女優を彷彿させる様な韓国の女
性弁護士が参加していた。日本側の添乗員は東大法学部出身の女性。二人で流暢な英語で話す姿に触れ、座っている場所を忘れる思い
であった。
また、ホテルへ帰る地下鉄は夕方のラッシュ時であった。斜め向かいに座っている角刈りの青年が立ってきて、私に席を譲ったのだ。白髪
のおじさんが立っている姿を見て、席を譲ってくれたのだろう。日本では体験がなかった。同じ様なことを北京の地下鉄でも体験した。両国
の民集の優しさに触れ感動した。
・ストックホルム(スウェーデン)の高齢者施設を訪問した際のことだ。
私は次の様な質問をした。
私:入居者同士のトラブルで傷害事件などおこりませんか。
視察をしたグループの長:そんな失礼な質問をするべきではない、と質問者を封殺した。
地元のガイドさん:質問を続けなさい。
こんなやりとりの中で、表現の自由を大切にしている国柄が感じられた。個人主義の徹底ぶりを垣間見た思いだ。
・南京虐殺記念館視察・平頂山虐殺記念館視察。足が震えて前へ進めなかった。
・中国南京大学日本語科で学ぶ学生を交流。
学生達は、中国への侵略戦争について一切触れなかった。彼等の日本語は私の訛りのある日本語より上手かった。
・北欧の大学で学んだ障がい者に対する発想の違い。
日本は「可哀想」。北欧は「自分も何時そうなるか分からない」。この発想の違いが日本の行政に如実に反映される。いわゆる哀れみの発
想である。障がい者がなぜ不自由な生活を強いられているか、という根底に触れるにはまだまだ程遠い様だ。
・アメリカ運輸省視察
貨物輸送を学ぶ。同時に担当者のユーモア精神に圧倒された。
・アウシュヴィッツ博物館視察(ポーランド)。
ここだけで約140万人が虐殺されたという。収容所はそのままの状態で保存されている。人間のやることの凄まじさに仰天。しかも、これ
が民主主義体制下で起きたのだ。
収容所4号館入り口に「歴史を記憶しない者は、再び同じ味を味わざるを得ない」と刻まれていた。
・アンネフランク・ハウス見学(オランダ)。
世界各国の子ども達が大勢訪れていた。
私は、築78年になる。これからの生き方として、心身共に補修しながら、「自律心」により一層磨きをかけ、アグレッシブに生きたいと考えている。その為には、日々学習は欠かせない。そして、孫が高校生になった時、再びインタビューを受けることを期待している。その際の質問が今から楽しみである。
以 上