川崎19人殺傷事件容疑者の底流
川崎19人殺傷事件。容疑者、職業不詳51歳自殺。少年時代の写真からは容疑者の行動は想像出来ない。この手の類似事件によく使われる「心の闇」。しかし、「心の闇」で一括りするのは安易すぎる。何の教訓も生まれない。関心はあるが関係がない、というスタンスで本件に灯りを照らすと教訓を得ることは難しい。三日もあれば忘れ去られる。
ところで、今回もそうだがこの手の類似事件、例えば永山則夫連続射殺事件・秋葉原通り魔事件。両者に共通していたのは愛情に無縁であった。にも関わらずマスメディアを通じて「愛情」ということばん触れることがない。とても不思議である。
私達は「愛情」の力を軽視、いあるいは履き違えていないだろうか。確かに愛情は時間がかかる。しかし、信頼と希望の種を蒔く。暴力は恐怖で相手を支配しようとし、怒りと憎しみを生むだけである。
オランダ在住のリヒテルズ直子氏は著書「オランダの教育」に次の様に記している。
「なぜ国が国の制度を挙げて、子どもの個性を重視しハンディのある子どもに教育機会の均等を実現しようと努力するのでしょうか。それは、一様な価値観や忖度で子どもを選別していると、そこから落ちこぼれる子ども達が将来、社会のどこにも位置を得ることが出来なくなるからです。それは社会不安の原因ですし、その社会の将来の発展に大きな損失です。社会そのものの臨機応変の柔軟性と活発な想像力を期待できなくなります」。
学校は勿論、保護者も一様な価値観や忖度で子どもを選別していないだろうか。ツケは全て社会に還元する。
この点、本件容疑者は愛情、共感、信頼などの内面的価値に触れることがあったのだろうか。世の中の側に潜む病理がなかったのか。これは、私達がこの事件を検証し、教訓にしなければならない視点であると考える。
以 上