聾学校高等部卒業生別れの言葉
卒業した安堵感、社会へ飛び立つ不安。いつも変わらない卒業式の光景である。子ども達よ強くあれ。幸多かれと願わずにはいられない。
以下は、高等部卒業生代表者「別れの言葉」の一節である。
「『認め合おう仲間の気持ち 学部を超えて心を一つに』これは、相手の意見を尊重し、学部に関係なく協力し合い、みんなの笑顔が溢れるようにと願った、今年の生徒会のスローガンです。生徒会の活動や様々な行事を通して、一人一人違っていても心が一つになれた。そんな満足感で今はいっぱいです」。
なんと格調の高いスローガンだろう。私はこの「別れの言葉」に出会い驚きと感動を覚えた。人の違いを受け入れる、ということは大人社会ではまだまだ難しいのが現状である。それを生徒達は、体現して見せたのだ。これには感動した。
大いに自信になったことだろう。色々な活動の過程から得た満足感は、生涯の宝物になるに違いない。君たちの学びの質の高さに驚くのだ。
私は、年に何回か憲法の講演を続けている。中でも13条前段は、特に強調する条文である。憲法の中で最も重要な条文と言われるからだ。同条前段は「すべて国民は個人として尊重される」と規定する。私は、これを人として皆同じ、個人として皆違う、と理解している。つまり、スローガンはまさに憲法13条前段を体現していたのだ。
そして、笑顔を手段に一人一人の違いを乗り越えて、事を成し遂げようとする姿勢。なんと素晴らしいことか。笑顔は笑うこととは違い、言うほど簡単ではないからだ。しかし、人を癒やす力は計り知れないと思っている。
得た自信は大きい。必ずや君たちの人生をより良く生きる利器になるに違いない。そして、君たちが健常者に感動を与えていることをもっともっと誇りにしていいと思う。君たちが不自由な生活を強いられているのは、君たちのせいではない。このことを忘れない様にして欲しい。
「事実は変えられないが、評価は変えられる」。苦しいときは、この言葉を思い出して欲しい。
以 上