著者は何を伝えたかったのか


  先般、映画「八甲田山」がテレビで放映された。映画制作者は、営業を度外視して製作したと言われる映画だ。ところが、これが大ヒットする。
  思い出すのは、「指揮官の決断」(2008年1月3日発行)の著者山下康博である。本は購入していたが、読むことはなかった。テレビを見た機会に初めて開いてみた。
  なぜ、著者は24年間の教員生活を辞めてまで「八甲田雪中行軍遭難事件」にのめり込んでいったのか。なぜ、会社を設立し、3000回もの講演活動を展開したのか。そこには、現代社会における危機感、生き抜く息苦しさを感じていたのだ。
  著者は「指揮官・福島泰藏大尉の人生観や職業観、あるいは組織の中のリーダーの在り方に触れ、現在抱えている種々の難問題の解決のヒントにして頂ければ、著者としてこれに勝る喜びはない」と結んでいる。
  今日、「大人の幼稚化」「思考の幼稚化」が進み、「社会全体が幼稚化」してきていると言われる。以前、テレビ番組で憲法をただの「紙切れ」と言って憚らない防衛幹部がいた。」これなどは、思考の幼稚化がかなり進行している証であろう。
  汗を流してなんぼの世界に加え、愛情、共感、信頼などの内面的価値に磨きをかけ、自分自身の価値を高める時代である。この本をただの紙切れと評価するのか、内面的価値を読み取るのか。発行から11年経過するも、世相を反映しほんの輝きは増すばかりだ。一読を勧めたい一冊である。

  以 上