「ハンセン病国家賠償訴訟熊本地裁判決(平成13年5月11日判決)
多数決原理からこぼれ落ちる少数者の重要な人権を擁護した判決。どれほど国民に勇気と感動を与えたことか。以下は、憲法判例百選U(第五版)より抜粋したものである。
「新法(昭和28年「らい予防法」)は、6条、15条及び28条が一体となって、(ハンセン病を)伝染させる恐れがある患者の隔離を規定しているのであるが、・・・これらの規定(以下「新法の隔離規定」という)は・・・居住・移転の自由を包括的に制限するものである。」
「ただ、新法の隔離規定によってもたらされる人権の制限は、居住・移転という枠内で的確に把握し得るものではない。ハンセン病患者の隔離は、・・・当該患者の人生に決定的に重大な影響を与える。・・・
その影響の現れ方は、その患者ごとに様々であるが、いずれにしても、人として当然に持っているはずの人生のありとあらゆる発展可能性が大きく損なわれるのであり、その人権の制限は、人としての社会生活全般にわたるものである。この様な人権制限の実態は、単に居住・移転の自由の制限ということで正当に評価し尽くせず、より広く憲法13条に根拠を有する人格権そのものに対するものと捉えるのが相当である。」
隔離政策を遂行した行政の責任について、 隔離政策の遂行が患者に対する差別や偏見を「作出」したばかりか「助長」した点を重視し、厚生大臣の過失を認定している。
判決が、新法の規定を「少数者であるハンセン病患者の犠牲の下に、多数者である一般国民の利益を擁護しようとするもの」と断じ、多数決原理からこぼれ落ちる少数者の重要な人権を擁護した姿勢は、単に一地方裁判所の判決としてのみ理解されるべきものではない。」
以 上