費用対効果
費用対効果という言葉に触れたことはないだろうか。実はこの言葉は、障がい者にとって中々のくせものである。障がい者の人権保障に、時には岩盤のごとく立ちはだかるからだ。
費用対効果とは、導入や運用にかかるコストと、導入により得られる効果を金額ベースで比較したものをいう。例えば、特別支援学校で子どもの教育に効果的な物品を購入したい。しかし、その物品は廉価ではない。この様な場合に登場するのが「費用対効果」という言葉である。
これは、果たして正しい発想なのだろうか。障がい者に対する効果は、金額ベースでは図れないからだ。とすると、障がい者に対しては「費用対効果」という物差しは使えないはずだ。現場の教職員は、この言葉に惑わされてはならない。
このことは、障がい者はなぜ不自由な生活を強いられているのかを考えてみれば分かり易い。その際、次の二つの視点は重要である。一つは、障がい者は社会の構造を作っていないということ。もう一つは、社会の健常者の、かつ成人男性を想定して作られているということ。この二つの視点は、障がい者の問題と向き合う際の大前提である。そもそも、障がい者に対する費用は、障がい者に何かの効果を期待しての話ではないことが良く分かる。
費用対効果の発想は、社会的障害の除去の実施について、必要且つ合理的な配慮に関する環境の整備を認めた障がい者差別解消違法の趣旨を没却しかねない。
以 上