日本大学アメリカンフットボール部部員の皆さんへ

  失敗は教訓の宝庫です。「話し合い」はとても大事なことです。ですが、一人一人の「自立心」が欠如した状態のままでの「話し合い」は、雑談に毛が生えたような結果に終わる可能性があります。しかも、「話し合い」は運動部選手にとって、決して得意な分野ではないと思います。
  以下は提言です。
  まず、先輩後輩の垣根を取り払うことです。
  次に、ラグビーW杯、エディー・ジョーンズヘッドコーチが強調したマインドセット(思考回路)を変えることです。同コーチは「規律を守らせる為、従順にさせる為だけに練習をしている。それでは勝てない」と指摘したのです。
  更に、「自立心」の重要性を学び、「人との違い」を受け入れる精神を身に付けることです。
  「選手一同の声明文」の重要なポイントは、「盲目的」に従ってきた、という下りです。なぜ、盲目的に従ってきたのか。「自立心」が醸成されていないからです。意見を述べる勇気がないからです。その方が楽だからです。勿論、前監督が他校で指導していても同様なことが起きていたでしょう。つまり、これは日本大学アメフト部に特化した問題ではないのです。
  今、加害選手の記者会見を勇気ある行為と賞賛する空気が蔓延しています。ですが、加害者は反則行為と認識して反則行為を実行したのです。これは勇気ある行為ではありません。勇気ある行為とは、反則行為の指示を断ることです。断る「期待可能性」はなかった、との主張は通じません。これは、社会のルールです。長い人生、これからも決断を迫られる機会は何度となく来るはずです。「自立心」、つまり、自分の頭で考え、自分の価値観で決断し、自分でその結果について責任をとる、という構造を鍛えておくことはとても大事なことと思います。
  「成功することは素晴らしいが、人間成長することはもっと素晴らしい」。私は、この言葉がとても好きです。アメフトに一生懸命挑戦している姿は、諸君の成長過程の通過地点に過ぎません。
  これからは、新しい指導体制で始動されます。是非、監督・コーチ陣と不断のコミュニケーションを駆使し、練習に試合に励んで下さい。勝つことも大事だが、強いチームを作ることはもっと大事だと考えています。長い人生、主体的に生きて生きて行くために、後者の方が大きな武器になると考えるからです。「奴隷の自由」の選択は決して人間を幸せにはしません。
  私は、通信教育で日本大学を卒業しました。1967年のことです。その際、スクーリングで東都大学野球の雄、日本大学の名監督香椎さんの指導を受けたことがあります。その時、初めて高校スポーツと大学スポーツの違いを知りました。その違いとは「主体性」自立心」を重視する指導でした。当時私は、東日本準硬式大会へ青森県代表で出場したり、現役で野球をやっていました。
  アメフト部は大きな代償を払いました。しかし、萎縮するのではなく、今回の件を教訓に新しい自分を発見して下さい。そして、新しい自分に誇りを持って、更なる精進にへ励んで下さい。「事実は変えられないが、評価は変えられる」。頑張って下さい。応援しています。