一人一役、全員主役
全ての価値の源泉は個人にある(憲法13条前段)。これを野球グランドで再現する高校野球指導者がいた。昨夏の甲子園準優勝した広陵高校野球部中井哲之監督である。
新聞によると、「チームのモットーは『一人一役、全員主役』。新入生を迎えて部員が130人となった。どんなに大人数でも部を離れる選手はいない」。「今夏の広島大会開会式で、ベンチ外の3年生も入場行進出来ないか考えている。3年間やりきった選手を大事にしたい。控えにも優しい高校野球でありたい」。
私も高校野球児であった。3年時にレギュラーになれない選手は、全員部を離れていった。3年間部活を全う出来なかったという挫折感は拭いきれないだろう。しかし、これでは「自信」は芽生えない。
高校野球は教育の一環。教育の目的は、一言で言えば「人格の形成」である。欠かせないのが「自律心」の涵養である。しかし、「自信」のないところに「自律心」の涵養は難しい。
「全員主役」の発想は、一人一人が個人として尊重されるということである。これは、子ども達に自信と勇気を与え、活力が湧いてくるはずだ。ですが、これは全国優勝するより難しいことかも知れない。野球の技術指導は出来ても、内面的価値の指導は難しいと考えられるからだ。
だが、子ども達にとっての財産は「優勝」より「自律心」、つまり内面的価値を鍛え、成長することにあると考える。価値観の多様化、かつ長寿社会を生き延びるには尚更である。
子ども達に夢と希望を与えて欲しい。「ベンチ外の3年生も入場行進」は、「全員主役」の発想の具現化である。全国に先駆けて、是非実現して欲しい。そして、これが全国に広がることを期待したい。
以 上