不登校・引きこもり、事前予防策を重視

  不登校・引きこもり、事後救済の話は良く聞くが、事前防止の話は殆ど聞くことがない。
  私は「孤独な子どもに気付かない親達」「子どもの話を聴くのが教育の基本」というタイトルで講演を始めて15年、90回を数える。始めた頃は、不登校の走りの様な時期であった。2ヶ月1回のペースの講演は平均10名くらいの聴講者がいた。場所は青森市であるが、八戸市、弘前市方面から来られた方もいた。
  様相に変化が見え始めたのは、非正規労働者など労働環境の劣化が始まった頃である。所得格差が教育格差という言葉が出始めた頃である。現在では、3名〜5名の聴講者である。ところが、悩みの深刻
度は増しているのだ。
  私が講演で強調するのは、子どもは受け入れて貰ったと感じることで初めて優しい気持ちや生きる力が生まれる。「聴く」ことを重視、対話を通じて子どもに寄り添うことの2点だ。ところが、「自立心」が弱く、付和雷同、合わせスタイルで生きてきた人には、ことのほか難しい様だ。
  以下、不登校・引きこもりを生む家庭環境の共通項を探ってみた。
  まず、集団主義的傾向が子への強制力や同調圧力を強める教育現場。ところが、家庭がより学校化しているのだ。
  その結果、
@人の違いを受け入れることが出来ない。
    私達は、子どもの頃から人と同じ様に生きることのメリットを叩き込まれてきた。そんな風に育てられれば、そこから逸脱した集団や個人を
  排除とする意識が働く。一人一人が違って当たり前という発想が生まれないのだ。これはいじめの元祖でもある。
A命令・強制することが教育と勘違い。子どもを受け入れることが出来ない。
B自分の価値観に当てはめようとするあまり、子どもに寄り添うことが出来ない。
 
  不登校、引きこもりに関する相談センターが青森駅前に設置しようが、有能なカウンセラーが常駐しようが、親が変わらなければ子は変わらない。自分が同じことを繰り返し、子どもの変化を求めるのは「自己中」という。親がまず、自分の足で立つことだ。その為には、自らに自信をもつことだ。ところが、「主体的」に生きてこない人にとって自信を持つことほど難しいものはない。
  自信を持つには他者との比較ではなく、自分との闘いを挑むことだ。見栄、虚栄心は自己満足を得られようが、人の成長を阻む毒を持つ。「主体的」に生きることで「感動」と「教訓」を手に入れよう。その繰り返しが自信を醸成すると考える。
  集団主義的傾向を強める風潮は、国民から考える力を奪い、親が自信を失っていることが不登校・引きこもりを生む環境の共通項とみる。「事前予防」の強化が求められる。

                                                                               以 上