共生社会実現のため自立心の醸成を
自分は難聴を隠し、聞こえるふりをし、社会に迎合して生きていく。その一方で、社会には変化を求める。排外主義的傾向を強める社会の影響を受け、その様な聴覚障がい者が増えても不思議ではない。しかし、そうだとすれば、偏見、差別、いじめ構造の改善は遠のくばかりだ。あなたが何に困っているのか社会が分からないからだ。
中園英喜著『拝啓病院の皆様』に次の様な件がある。「ある医療従事者は、患者サービスの仕事をして20年になるが、聴覚障害者からクレームを聞いたことがない」。これは一体何を示唆するのか。
「全国難聴者・中途失聴者福祉大会」に来青した全米難聴者協会元理事長ドナ・ソーキンさん。己を奮い立たせたのは「人を能力で判断するのではんかう、障がいで判断する」という理不尽さだという。そして、訴えたのは「難聴を隠さず、聞こえるふりをしない」ことだった。これは、バリアの排除を恩恵、施しなどではなく、権利として堂々と主張する為には乗り越えなければならない重要なテーマだ。
そこで、提言したい。障がいが恥と感じることについて。また、自分で、自分が、何が必要かを主張することについて。組織はより一層学習に取り組んで欲しい。一人一人の「自立心」の醸成は共生社会を実現する素である。また、兄弟姉妹の減少の中、長寿社会を生きていかなければならない。支えるのは「自立心」であると考えている。
以 上
(2015年3月1日付日本聴力障害新聞「読者のページ」掲載)