漆器の保存と手入れについて

  

漆器の特長を生かした使い方と保存

 漆塗膜はどんなことを嫌いますか。

1.直射日光が嫌いです。

太陽光に当たると塗料や色材が変色や退色するのと同じように艶を失い、何となく古びた感じになる。 目に見えない紫外線によっても、表面の艶を失うので、長時間直 射日光や紫外線が当たらないように注意して下さい。

2.急激な寒暖の変化のくり返しが嫌いです。

脳卒中を心配している人が、暖かい所から急に寒い場所へ移動するのが問題になるのと似ています。 漆器の素地と塗膜は、異なった物質からできている場合が多く寒暖に対しての伸び縮みが同時に、同程度に行われるとは限りません。 寒暖のくり返しによって、素地と漆塗膜の伸縮反応が逆になった時、素地が暖かくなって伸び、塗膜が冷やされて縮んだ場合に、塗膜のヒビ割れとそれによる剥離の原因になる。

3.衝撃が嫌いです。

硬いもので叩かれるとヒビ割れが入る。これは、茶碗やつぼと同じである。落としたらそのショックでヒビが入り、塗膜剥離の原因となる。

漆塗膜はどんなことが好きですか?

1. 塗膜を形成する時、湿度が85%ぐらいの風呂の中に居たので、時々湿気が恋しくなる。また、風呂の中は暗いので、暗い所も好む。土の中に埋まって、4000年もジーと我慢していた仲間も居ることが知られている。

2. 水、アルコール、塩酸、硝酸、ラッカーシンナー、王水、フッ素など多の薬品に耐えることができる。

3. 熱に対しては、木材などと同じように250℃ぐらいまで耐えることができる。以上のような漆塗膜の性質を知ったうえで、次のような注意をして漆器を長く保存使用したいものである。

漆器の手入れ法

使用して汚れた漆器の手入れの仕方には、いろいろな方法があると思う。傷を付けることなく、汚れを落とし、漆器本来の艶を保つためには、次のような簡単な方法がある。

1. ガーゼのような柔らかい木綿布を、ぬるま湯に浸し、これをきつく絞って湿ったような状態にする。油気などは絶対に禁物なので、汚れた布は使用しない。漆器の汚れがひどい時、湿った布に食器用洗剤を1〜2滴つける。

2. 分で湿った布(濡れた状態は望ましくない。水滴ができ斑点状の曇りをつくる)で、漆器全体をていねいに拭き、乾燥するのを待つ。

3. 洗剤を使用した場合には、さらに洗剤の付いていない湿った布で、もう一度、ていねいに拭き乾燥させる。

4. 乾燥させるには、室内に数分放置させるのが最良である。ドライヤーやストーブなどの機器を使用しないこと。漆塗膜は、直射日光、紫外線、摩擦、急激な温度の変化などに弱いが、水アルコール、その他の薬品に対しては耐久性があるので、上記の手入れ法は、これら漆塗膜の性能を考慮したものである。

漆器の手入れに適した繊維類として、ガーゼ、ウルシクリーン(テイジン製)、ネルの他、セーム皮やティッシュペーパーなどをあげることができる。軟らかい物でも、乾燥している場合には、擦ると傷を付けることがあるので、湿らせて、さらに柔らかくして使用するように注意したいものである。

漆器の保存の仕方

1. 明るい場所に置かれる漆器には、使用しないとき、白い布をかぶせておく。

2. 漆器を落としたり、漆器の上に器物を落とさないこと。

3. あまりにも乾燥した場所に数年間も保管せず、時々湿気を与えること。

4. 小さい漆器の場合、使用も鑑賞もしない場合、和紙に包んで桐箱に入れ保管しておくこと。

5. お椀のような日用雑器類は、たわし、みがき粉、ブラシ、熱湯などを使用せず、陶器類のフチなどで叩かないような注意をはらうことで、かなり長年月の使用に耐える。