(下北郡佐井村)

瓜 姫
 むがしぁ、あるどごに、爺ど婆どあって、瓜子姫(うりこひめ)コて、
(かご)さ入(へ)で、大事に育ででだど。
 爺も婆も山さ行ぐ時(ずき)に、
「瓜子姫コ、天邪鬼
(あまのじゃく)来ても戸開げさな」て、そして行ぐど。
 そしたら、爺ど婆ど山さ行ったとき、天邪鬼来て、
「瓜子姫コ、遊ぶべし、来せじゃ」て。
「婆に叱
(しか)らいして行がねい」て、
「草履履
(じょりへ)で来(き)せ、下駄履で来せ」て。
 そして、も、なんぼしても行がねけぁ。
 「我
(わ)、行ぐがの」て、入って来たけぁ、
ほれ、流しの下がら入って来たの。
そして、
「瓜子姫コ、何
(なん)が食(く)ての」て。
「戸棚に何どが入ってだして、食
(か)ねが」
てば、出して食てしまう。

「仏様に団子だが上がってぁしてに食(か)ねが」
てば、ほれも食
(く)てしまって、
「もっと食(く)て」て言
(へ)るど。
 ほしてか
「我
(わい)でも食(か)ねが」たけぁ、
ほんとに食(く)てしまったど、瓜子姫コば。
 そして瓜子姫コに化げで、籠っコさ入って、そしていだ。

  晩(ばげ)になって、爺ど婆ど山がら来て、「瓜子姫コ、戸開げせ」たけぁ、
烏(からす)ぁ、屋根にいで
「手もねぇ、足もねぇ、流しの下がらつまぐってこい」てたど、(※つまぐって=もぐつて)
流しの下がら入
(へ)って来て、ちゃんと瓜子姫コいる。
 そして、晩になって、婆抱
(で)いで寝(ね)だきゃ。
 そしたけぁ、ほれ、毛おがってずもの、天邪鬼だずもの。
 瓜子姫コ食(く)て、化げでいだのだと思って、今度
(こんた)布団のまま包んで、からげて、そして外さ出したど。
 そしたきゃ、お日様上る頃さなったけぁ、
すっかり、は、天邪鬼になってだったて。
 そして、ねぇずてば。
 (※ねぇずてば=おしまい。終りの意)