独立行政法人は生き残れるか?      2008/12/14 10:42:17 
1.独立行政法人が廃止対象として狙われる原因
  1. 法人の数が多い上に規模が小さいために潰すのに手ごろである。また、各省庁が統廃合に晒された場合の「防波堤」役として使うことを各所管省庁が頭に入れている。加えて、法人の職員は公務員ではなく、民間の会社員と同じ待遇であり、雇用保険と厚生年金に加入させ、労働三権を与えていつでも首を切れるようにしている。
  2. 国民や財界は独立行政法人は特権官僚たちの天下り先と理解している。所管省庁はかつて人事の行き詰まりの解決策として、こぞって独立行政法人を設立したものである。マスコミなどから、「天下り人事」をいくら叩かれても現在も厳然として実行し、相も変わらず役員ポストには「元特権官僚」が就任している事実がある。
  3. 独立行政法人に関係する汚職事件や政財官癒着の構造が無くなっていない。競争入札ではなく随意契約が大手を振ってまかり通っていることも事実であり、元高級官僚が天下った先の団体に「優先的に契約」を多く廻していることがある。
  4. 行政改革で中央省庁が統廃合されることになると防波堤として、まずは、所管の独立行政法人を統廃合の生贄として差出すことで切り抜けてきた。独立行政法人は今でも本省庁を守る「防波堤」としての役割は変わっていない。所管省庁が法人の生殺与奪の権限を握っている限り、法人の総裁や理事長と言えどもこれには逆らいないのである。
  5. 独立行政法人が民営化や統廃合される事によって、一儲けしようとする人たちがおり、甘い汁を吸おうとする輩も多い。大きな事業を営む法人では大きな金が動くため、その金に群がる人たちが必ずいるのである。民営化された法人の資産は政府から簿価で安く売却される。統廃合と言えども「利権」や「便宜供与」が入り込む余地がない訳ではない。
2.独立行政法人の統廃合の基準
  1. 設立当初に目的とした機能を現実に果たしていないものは廃止する
  2. 政府関係機関等の中で同種の事業を行うものがあるときはこれを統合する
  3. 財務的、経営的に自立運営能力をものたないものは本省の付属機関にするか、業務を地方団体に委譲する
3.行革審や有識者会議のメンバーの考え方
  1. この道一筋と執念を燃やして独立行政法人を調べている専門家もいれば自前でスタッフを雇って研究させている民間人もいる。それぞれが独立行政法人に対し一家言持っている。
  2. メンバーの多くは民間企業の視点から独立行政法人を捕らえており、法人側の考え方とは見解が異なっている。よって、多くの点で国民に対しての説得力を持っている。
  3. 法人側はメンバーを「政府や財界の手先」とは見ないで、存続を言うのであれば彼らを唸らせる説得力のある反論を用意しなければならない。
4.費用対効果から見た法人
  • 設立当時は職員も強気で「公共性の強い業務をしているのだから赤字が出ても仕方がない」と言っていた。しかし、赤字を抱えた法人が次々と廃止または民営化されるようになると職員の意識も変わった。とは言ってもまだまだ費用対効果面を考慮した業務運営は徹底されていない。
  • 何でもかまわず民営化すればよと言うものでもない。たとえ、利益を上げることが出来なくても、公益上必要とされ、その全体としての有益性が赤字よりもはるかに勝る独立行政法人があっても良いと国民が納得して、赤字を税金で埋めても存続すべきだとのコンセンサスがあれば別である。
5.職員の身分
  1. 独立行政法人の業務は「官から民へ」の流れにのって、これからも赤字の法人の統廃合がなされていくことだけは間違いない。ただ、法人の職員が解雇された場合には、同じ政府関係の独立行政法人の間で再雇用することでなければ混乱をまねく。
  2. 独立行政法人の職員の新人採用は極めて少ない。ほとんどの職員がは団塊の世代の属すと言っても過言ではない。従って、解雇された時の再就職は極めてむずかしい。よって、定年退職などの自然減によって人員整理をしなければならない。元来、独立行政法人の職員の身分は保障されたものではない。
  3. 国が進める業務が終了すれば法人も解散するのが筋であったために、雇用保険と厚生年金に加入させ、所管の省庁は労働組合を作らせていつ首を切っても良いように対応してきたのである。俸給も公務員準拠だが身分の保障がない分だけ、月々の給料はビックリ料が含まれている分だけ公務員よりは高い。
6.結論として

独立行政法人が生き残るためには

(1)民間の経営手法とサービスを積極的に取り入れること、
(2)費用対効果を考えた業務の展開をすること
(3)民間に負けないような常に新しいサービスと高いレベルの技術提供を可能としておくこと
(4)政官財の癒着が起きないように、公平な入札と契約を行うこと
(5)天下りをやめ、独立行政法人間を渡り歩く通称「渡り鳥」をやめて退職金と高給を減額
(6)誰が見ても不適切な予算の使い方をやめること(遊具や娯楽費)

以上であるが、独立行政法人はいずれ廃止される期限付きの業務を行っているものなのだと思って就職し、勤務することが必要になってきていることは確かである。元来、特殊法人時代から、時限立法で設立された組織であったのだから当然と言えば当然なことである。

(補足)  独立行政法人(特殊法人):各省庁が所管する公庫や公団のことを言う

●政府が特殊法人職員を現業公務員、公共企業体職員にしなかった理由
  1. 法律上、政府は民間労働者の雇用に関しては責任を負わない。従って、特殊法人職員を民間労働者と同じ身分で扱えば雇用責任を免れると考えたことにある。
  2. 政府は統廃合のたびに特殊法人職員の雇用保障を考えるのは煩わしいので、民間労働者と同じ権利を与え、自らの団結力で自らの雇用を守れと放り出したのであった。つまり、労働三権は雇用保障の権利放棄と引き換えに政府がくれた「絶縁状」だったと言える。
  3. しかし、政府関係法人労働組合連合の努力によって特殊法人間で「横断的雇用保障」がなされるようになった。すなわち、特殊法人の間で統廃合によって解雇された職員を再雇用して吸収することにしている。
  4. かつて、雇用促進事業団(現:雇用・能力開発機構)は国鉄(現JR)が民営化された時に職を失った国鉄職員を151名採用したことがあった。また、1982年にはYS-11を製造していた日本航空機製造(株)の廃止にともなって、転職希望の職員を採用した実績もある。
  5. 結果として、縦割りのセクトで特殊法人の統廃合を考えると廃止された法人の職員は転職、再就職が困難になってしまう。そこで特殊法人は横の繋がりでお互いに失業した職員を吸収していこうということにしたのである。


(参考文献)

「特殊法人は不死身か」 滝沢幸一著 非売品

滝沢幸一: 政府関係法人労働組合連合(政労連) 元中央執行委員長
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