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森林害虫シリ−ズ(U) 「とびくされ」-2

第2のマツクイムシともいわれ林業家にとって深刻な害虫 となっている「スギノアカネトラカミキリ」を紹介します。


前回は「とびくされ」の説明をいたしましたが、その被害をもたらす「スギノアカネトラカミキリ」の産卵習性について解説いたします。

成虫の習性
成虫は訪花習性があり、「コゴメウツギ」「ガマズミ」「ヤグルマソウ」「ミズキ」などの花で採集出来ます。しかし、被害材から脱出するのはこれらの花の開花期よりは早い傾向が見られます。
例えば成虫が好んで訪花する「コゴメウツギ」の開花期と実際の成虫の脱出期とのずれは約一月程になります。盛岡付近で観察した例では「コゴメウツギ」よりも早い開花期では「ミズキ」「サンショウ」などでした。
脱出後、直ちに訪花するのでしょうか?必然性に疑問もあります。
左の図は被害材からの脱出個体と「コゴメウツギ」の花上で採集した個体について寿命と産卵数を比較したものです。
脱出個体は5月上旬から出始め、累積個体数は6月上旬でピ−クに達しています。
この頃、「コゴメウツギ」が満開となり、ほぼ同数の訪花個体が得られました。
6月中旬以降は両個体群とも徐々に死亡個体が現れ、その個体数の減少傾向は非常に類似しています。
累積産卵数は脱出個体群では2,000粒を超えていますが、訪花個体群ではせいぜい500個でした。
また、訪花個体を採集できた6月中旬まで脱出個体群の累積産卵数は1,000粒を超えて総産卵数の約半数を産み終えていました。

産卵数                        

左の図は成虫の産卵数を体サイズ別に比較したものです。
横軸には成虫の鞘翅の長さをとっています。
縦軸が各個体の産卵数です。
相関係数は脱出個体群が0.75であるのに対して訪花個体群の相関係数は0.498に過ぎません。同じ種類の昆虫でありながら両者の間には明らかに質的な差異が見られます。
これらの理由は何でしょうか?
私は「コゴメウツギ」などの花で採集される個体の多くは産卵済みの個体が集っているのではないかと考えています。
室内の飼育実験では水を与えただけでも3週間ほどは生存可能で、交尾・産卵も正常に行われました。
産卵された卵も正常に孵化いたしました。

産卵

 左の写真は「スギノアカネトラカミキリ」の卵です。右の写真のように卵は樹皮の隙間に刺しこまれる様に産まれています。成虫は比較的寿命が長く、飼育条件下では約3ヶ月間にわたって200個程度の産卵が可能でした。
産卵行動は隙間に産卵管を差し込むようにして行います。
産卵場所に選ぶのは
枯れた2次枝、3次枝の付け根が多いようです。


             (左画面:卵、右画面:中央円形部分が2次枝切り口、その斜め右上が産卵された卵)

採卵

                                                                                              一般に隙間に産卵する習性のある「カミキリ類」は次のような方法で人為的に採卵が可能です。
左側の画像は成虫の飼育手法を示したもので、飼育用のネットと餌の蜂蜜、採卵用のスギ材片です。
材片の下はろ紙ですが産卵はろ紙と材片の隙間に写真右のように行われます。
卵はやや押しつぶされた様になっていますが孵化には影響ありませんでした
(この採卵手法は「スギカミキリ」、「タケトラカミキリ」などに応用できました。材片は昆虫の食樹によって異なります)


 

孵化

卵は10日程で孵化しますが孵化幼虫は産卵された場所の直下に穿孔していきます。
穿孔した場所には写真右のような白い木屑(虫糞)が排出されています。
材内に穿孔した幼虫は坑道内に虫糞を詰めながら死節の周辺を不規則に食い進んで行きます。この時、被害木が生きていれば生理的な反応が起こり(生体防御反応)食痕周辺に「ピノシルビン」などのテルペン類が蓄積されていくと言われます。
これが赤黒い染みとなって「
とびくされ」「ガニ腐れ」として目に付くようです。
輪切りにした材片ではこの様な変色現象は起こりません。
また、成虫が脱出した跡などには
「とびくされ」−1で示したような穴が開きますので腐朽菌の侵入孔となって材の腐朽が見られる場合もあります。

 

次回は「とびくされ」の原因をつくる「スギノアカネトラカミキリ」の幼虫の成長について述べてみたいと思います。


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