身近の生き物森林害虫シリ−ズ(3)
                                             2000.12.28.

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森林害虫シリ−ズを始めるに当たって

本格的な雪の訪れと共に外の生き物を探し歩くこともままなりませんので、来年の春まで古いスライドを中心に在職時代の仕事を振り返ってみたいと思います。

シリ−ズの手始めに「マツクイムシ」を数回に分けて取り上げてみます。

                  「マツクイムシ(その3)」

前号では温量計算の作図例を示しましたが、気象月報から各地の温量を計算するのも結構手間暇の掛かる仕事でした。
下の図は1986年の気象月報から東北 6県各地の 4月から10月までの観測デ−タをもとに計算した温量の分布図です。観測デ−タをパソコンに打ち込むだけで大変な労力が掛かりました。

この図ではこの1986年の時点で「マツノマダラカミキリ」の分布が確認されていた地点に略相当する 950日度以上の地点を赤で表示してみました。日本海側で温量が高いことが読みとれます。

しかし、左のような作図を単年度の状況把握のためならばともかく地域ごと、年次毎に大きな変動があり、長期的な予測は無理です。
長期的な予測のためならば各地の平均気温のデ−タを用いなければなりません。

また下の図はある地点(この例では盛岡市下厨川)の1963年〜1986年まで24年間の年次変動を表したものです。
図に見られるように暖かい年と寒い年の変動は±200日度ほどの変動が見られます(緑色の線はこの間の平年値と波線は平年値の信頼限界です)。

1986年は盛岡(東北支場構内)では略平年並みだったことが判りますが、1978年の様に1,200日度の温量に達した年もあります。
 
各観測地点の平年値デ−タが入手できませんでした(当時)が、東北支場防災研究室に居られた小島忠三郎さんの研究で当時の大型計算機(当時の農林省が導入した計算機を全国の研究者が自ら作成したプログラムを使って共同利用していた)で計算させた「任意地点の月別平均気温を求める重回帰式」というのが発表されていました。


小島さんの発表されたのは下表のように「標高」「陸度」「緯度」「経度」の 4因子を用いてそれぞれに計算された係数を掛けて算出するもので後にBASICプログラムにも書き換えられました。

小島さんのご厚意でそのプログラムを温量分布図のプログラムに組み込んでみました。
 
推定される平均気温の精度がどの程度なのか検討するために数カ所の地点について気象月報から計算した値と重回帰式で推定した温量を比較したのが下の2枚の図です。


例に示したのは青森と深浦の2ヶ所で図では基準を1000日度に描かれております。1000日度ラインの下方にある実線が観測値による平年値で、その信頼限界が細かい破線で上下に描かれています。そして太い破線が小島さんの重回帰式によって計算された推定値です。青森の例ではほとんど実測値と推定値が一致しております。



深浦の例でも推定値は実測値の信頼限界の下限付近にあることが判ります。他の観測値点についても同様の吟味が行われましたが、推定値が極端にずれた例はなく何れも信頼限界内に略収まることが確認されております。

古いスライドをスキャンしてみましたが画像は良くありません。プログラムを改良してカラ−フイルムで撮影したのが上から2枚目の写真(東北支場構内)です。突出した暖かい年があっても連続したことはなかった様です。

そこで、アメダスの各観測地点について推定有効積算温量を計算して下図のような温量分布図を作成してみました。飼育実験から求めた1,000日度以上の地点を赤で表示してみますと当時の「マツノマダラカミキリ」の分布地域と非常によい一致が見られました。

2000年現在も「マツクイムシ」の被害はこの赤で示された地点の付近で発生しているようです。
青森県下では日本海側の県境付近にある岩崎付近で「マツノマダラカミキリ」の成虫が数年前から誘引器で捕獲されたとの情報もあり、青森県林業試験場の調査が行われていますが、「マツクイムシ」の被害木は2,000年現在も発見されていないそうです。

左の図を作成してからすでに20年余の歳月が経過していますが、2,000年現在の東北地方における「マツクイムシ」の被害状況は略この図に見られるように岩手県では北上川流域の県南部、秋田県下では青森県との県境付近に達しているようです。

岩手県中部以北〜青森県のの太平洋沿岸では夏でも「ヤマセ」の影響を受け、温量の低い傾向が読みとれます。

しかし、最近はしばしば地球温暖化が話題となり、南方系昆虫の青森県内への侵入も報じられています。また異常とも思われる厳しい残暑が記録されるなど気になるところです。
もし、単純に平均気温が0.5度上昇したと仮定すれば次のシュミレ−ト画像から青森県内でも津軽平野を中心に「マツノマダラカミキリ」が棲息可能となり、「マツクイムシ」の被害が蔓延する可能性があることが予想されます。
1,999年に続き2,000年も異常とも思える厳しい残暑がありました。2年連続の異常高温は地球温暖化と共に今後の「マツクイムシ」被害の動向にも厳重な注意が必要かと思います。


 

次回は天敵類について紹介します。

「マツクイムシ(その1)(その2)その4)(その5


友人のHP

青森の自然:青森県内の景色や花の画像が見られる人気NO.1のHP (棟方啓爾氏)

青森の水環境:始まったばかりのHP、青森県内各地の水環境が画像と共に紹介される予定(蝦名憲氏)

岩木山を考える会:津軽のシンボル「岩木山」の自然が破壊されています


トンボのリストへ青森市内で記録されたトンボの記録です(’99.7.〜’00.9.まで)

              

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