深い皺(シワ)

1.

不況の風吹く都会は冬
日雇いの痩せたオジさんは
朝冷えの中 職安に並ぶ
僅かな求人を求めて

渡された順番待ちのカードは
今日もすれ違い
明日へと命を繋ぐカードを見つめては
また背を丸め帰る

路地裏の風は 日に日に体を凍らせる
吹きつける風に
咳き込む数が増えるばかりだ

働ける日を待ちつづけた
空腹をしのいで待ちつづけた

2.

順番待ちのカードはビンゴ
やっと手にした仕事は過酷で
落ちた体力に ムチを打つ
猫車を運ぶ手は かじかむほどに痛い
夕暮れに 稼いだ日当を手に薬局へ寄る
咳止めを手に取ってみるも安くない
薬の横のノド飴を買う

切り詰めた なけなしのカネ握り締め
足を運ぶ町の小さな映画館
大好きな人情映画に涙する

ああ 今夜だけは寒さがしのげると
微笑むその顔は 深い皺が刻まれていた