帰宅の途

1.

道なりに続く電線は
風を切って鳴いている
それは冬の厳しさに嘆く 悲しき笛の音
しんしんと降る雪に音はないのに

風上に目を向ければ
雪をかぶった八甲田 一筆書きの稜線は闇の中

2.

道なりに並ぶ街路灯は
まとわりつく雪を数えてる
それは地吹雪に耐える 希望の燈(ともしび)
しんしんと降る雪に色はないのに

見上げれば
瞬きするたび淡く滲む まるで雪の灯篭(とうろう)

3.

道なりに佇む街路樹は
凍ることなく 日々春を待っている
それは凛とした強さ 白のベールに包まれた繭に似て
しんしんと降る雪に熱はないのに

風下に目を向ければ
林を割いた新しい町 吹きだまりの空き地に刻む雪紋

4.

道なりに歩んだ足先は
帰る場所を知っている
それは 右足左足歩むたび クツの下で雪が鳴く
しんしんと降る雪に音はないのに

振り返れば
点々と記した足跡も
やがて降り止まぬ雪に消されてゆくだろう
前方に見える あの角を曲がれば 家はもうすぐ