だまし絵の世界

1.

白を見れば 右方向へ飛ぶ鳥の群れ
その影は黒く 影でしかない はずが・・・ 
黒を見れば 左方向へ飛ぶ鳥の群れ
その影は白く 影でしかない はずが・・・

Day And Night 
ほんの少し 視点を替えれば
浮かび上がるもうひとつの描写

エッシャーの描く トリックアートは
異次元への扉が
そこに仕掛けられているかようで
見る者の好奇心を 一瞬にして揺さぶるのです

2.

水路を循環する水の流れ
その途中には
決して途絶えることのない落下する水
どこを見ても汲み上げる装置はないのに

Water Fall
実像と虚像の隙間に仕掛けられた
無限ループは摩訶不思議な演出

エッシャーの描く トリックアートは
まるで白昼夢を見ているような錯覚
常識を身にまとう僕らを 軽くあしらうのです

3.

上っても下っても
永遠にたどり着かない
そこにあるのは 終わり無き階段
元の位置へ返るだけの

Ascending and Descending
三次元から二次元への変換の中で
平面に描かれた奥行きは ねじれている

エッシャーの描く トリックアートは
遠近法さえ誤作動を起こしてしまうほど
鑑賞するたび
平衡感覚はバランスを失うのです

4.

見えるもの 見えないもの
可視光線という狭い帯域の中で
僕らが見つめる先にある対象は本物?
それとも 上手に
つじつまを合わせているだけのもの?

エッシャーの描く トリックアートは
明と暗 昼と夜 対角にあるものの共存の世界
1枚の絵の中で 互いを結びつけている

紙の上に描かれた錯覚の世界
僕たちのいる現実の世界
“だまし絵の世界”と呼べるのは
はたして どちら