naca npo法人アートコアあおもり
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類煙色流流人種群

山田大一

略歴
1979 東京都生まれ
2006 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース 在籍


アーティストのステートメント

類煙色流流人種群
まず始めに実行委員会の方々や青森商店街の皆さまの助けがなければ展示にこぎつける事ができなかったので、 この場を借りて御礼を言いたいと思います。
今回のプロジェクトには八月の末に話を頂き、九月の中旬に参加意思が固まるような状態でかなりの強行軍となった。 まず青森に着き感じたことは、空と建築物との何ともいえぬ距離感と、行政機関がある街特有の虚無感を感じた。 街の道路はとても広く祭りのために整備され、ひっそりとたたずみ次の祭りを待っている。車に乗り移動すれば郊外には 大型店舗が立ち並び、人々の生活の分散化が感じられる。それは雪国特有の車社会であることの現われなのだろうか。 そして、恥ずかしながら初めてコンパクトシティ青森という構想を知った。その構想について思ったことは、 それにより求心力を持った地方都市は完成するのか、そしてそれは青森の人々、もしくは今回滞在した木村荘周辺の方々の 生活と何時になれば実生活でリンクするのかということだった。それについて私は不安を覚えた。その地でより良くいきる ために人々は働く、ただマクロ化した人々の生活(社会)は人々の欲を集め、その欲は方方する。それに対する答えとして 不安の(普段感じている私自身の不安だが)実像化に取り組んだ結果が今回の作品となった。
*毎日穴を掘りその穴はいつのまにか出ることができないほど深く深くなりました。上を見上げれば信じられない数の 飛行機が飛び交っているようです。僕の位置はGPSで確認してください。2010年に会えると思いますが駄目でもいつか 会えますから気にしないで下さい。それではまた。*

 

山田大一 煙人間の不安
黒岩恭介

長いカウンターがその中心に設置されているウナギの寝床のような細長い店舗で、騒音とともに大工仕事をしている作家の姿が強く印象に残っている。長いカウンターは、仲良く手を繋いだ風船人形たちに取り囲まれている。舞台なんかで使う霧発生装置から煙が風船の中に送り込まれ、風船人形は白い人形と化す。タイトルは「類煙色流々人種群」と付され、ルイケムイロリュウリュウジンシュグンと読むのだそうである。不安定な装置の所為で、僕が見に行った時はいつも煙がなく、煙が充満した人形を実際に見ることはできなかった。どうもスイッチを入れたり消したりするアートに日頃から不信感を持っている僕としては、スイッチを入れても作動せず、作家の思いとは裏腹にガンと抵抗する作品に対して、妙な親近感を持ってしまった。強固に存在を主張しているカウンターとは対照的に、カウンターを取り巻く透明な風船人形たちのはかない、弱い、頼りない存在は、連帯していることでようやくその自立を獲得しているかに見えた。しかしこの人形たちは連帯しているのか、単に煙の通り道を確保するために、数珠繋ぎになっているのに過ぎないのではないか、などと思ったりもしたが、これはどうあっても手を繋いでいなければ作品として成立しないと、直観的に思ったのであった。
作家は作家自身の不安の実像化が今回の作品であると、ステートメントの中で述べているが、その不安が青森という地方都市の将来に触発されたものであれ、作家の日常抱いている存在の不安感が前面に出たものであれ、僕が見た風船人形の頼りなさは、機能不全に陥った作品そのもののあり方から来る不安と重なり合い増幅し合って、僕自身の不安と共鳴するのであった。

(naca理事)