nacanpo法人アートコアあおもり
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「上を向いて歩こう」プロジェクト

最初に考えたこと
立木祥一郎

前橋で2005年に開催された「全国アートNPOフォーラム」での交流会の席でのこと。青森からは、あおもりNPOサポートセンターの三澤章さんと私が参加していた。来年、どうしてもこの全国フォーラムを青森で開催したいという話が三澤さんからもちあがった。明日、フォーラムの最終日には、来年2006年は別府でと手を挙げる準備をしてるとも聞いている。なにしろ来年は青森では県立美術館が開館し、弘前ではYOSHITOMO NARA+graf A to Zでてんてこ舞いのはずだ。そんな過密スケジュールの中でこのフォーラムを開催するのは、正直、無理だよ、そりゃあと思った。でも、三澤さんは普段は生粋の理系の人、冷静沈着な人間。いまの青森の現状を考えた上でなんとかしたいという心の底からの熱い想いが伝わってきた。前橋のフォーラムで、寂れた中心商店街のつぶれたデパートの廃墟を舞台に熱い議論をかわしたばかりだった。その商店街の空き店舗を巡って、「踊りに行くぜ」の黒田育世のすばらしいダンスなんかにほだされたまま、飲み会に突入していたのだ。自分の頭とはうらはらに、やりましょうと、いってしまった。
 立候補したのは、別府と青森。2006年の開催は、アートNPOリンクの理事会で両者がプレゼンテーションを行って決めると言うことになった。
 そこで、最初に考えたこと。フォーラムというのは2日間ぐらいの会議。そこでなにかが話し合われて、結論が出るというたぐいのものじゃない。中身は、今じゃないとできないこと、そして青森でしかできないないことにしたい。また、それを行うことで、青森に何かが残るものにしたい。しかし時間も金もない。  
 青森でフォーラムをやるとするなら、フォーラムをやるというのを起爆剤にして、街の空いてる店とかにアーティストが勝手にやってきて住んでしまうというプロジェクトをやれないか。その前段の試行プロジェクトをフォーラムのテーマにしたらいい。
 もともとスクワット願望みたいなものがあったのかもしれない。住むというのは、空いている店舗をアートスペースに改装して貸しギャラリーやカフェにするのとは、わけがちがう。住むことによって、いろんな予期しない展開や問題がおこるだろう。それが狙いだ。キュレーターが、セレクトした作家がある程度整えられた環境で、それでもその環境が完全なんてことはないから、ぶーぶーいいながら依頼された制作をやるレジデンス・プログラムとも違う。アーティストは自主的に青森にやってきて暮らす。なにをするかは、来てから考える。それも街の人々と一緒に。そもそもキュレーターなんてものはいらないのだ。だから街とアーティストの関係は、当事者にウエイトがシフトする。キュレーションは不在、当事者達のやりとりのなかから自律的にプロジェクトは進行する。どんなことが起きるかはだれにも分からない。でもひとつだけ言えること。確実に街の人々と、そこに暮らしたアーティストたちの意識は変わるということ。
 そんな妄想を企画書にしてプレゼンテーションに望んだのだ。
 結局、全国アートNPOフォーラムは青森と別府二カ所で開催されるということになった。呑んだ勢いでの話を、今度は、実現しなくてはならない。
 「上を向いて歩こう」というのは、商店街の一階はけっこう商店街は元気なので埋まっているが、2階より上が、やっぱり空いているので、ここに住んだらどうだろうというので、上ばかり向いて空き部屋を探していた経験から来ている。
 私が妄想したことは、ここまで。その後の顛末は、この報告書をみていただければおわかりいただけると思う。

naca 理事