アーティストのステートメント
That is what I say
私はこれまで油彩画によって、一つの作品を提示してきました。つまり、作品はあくまで一枚の絵画であった、ということです。
今回試みたのは、その絵画作品の完成に至るまでの過程を一つの作品として空間に表現することでした。
具体的には、普段自分が絵を描く時に「していること」、そして絵を描いている最中になっていく「状態」をありのまま見せることです。例えば、私は絵を描く際に音楽をかけています。音楽をかけていた方が自分の中に時間軸を作って、リズムを保って制作出来るからです。
私は気分が乗らなくなるとギターを弾くことがあります。いい曲が出来たらそれに詞を重ねて歌ったりしています。そうして新たな気持ちで制作に臨んでいます。本を読んだりもしています。とにかく、絵を描く時は、なるべく別なことを平行して行うようにしています。これは、音楽をかけることと同じことで、このように中途でアテンションを挟むことで制作の中にリズムを刻んだり、気分の切り替えを容易にしたりすることが出来るためです。
散らかったゴミや、絵を描くための道具などが散乱している状態はいつものことです。また、飛び散った絵の具もよく見当たるかと思います。これも私の制作には欠かせない要素です。実に粗暴。
最後に。作品によって表現したいことは何か、と問われると、よく「他者との完全なる断絶」と答えます。この世界はある意味で自意識の中の世界と言えます。つまり、他者と心を伝え合うことはあっても、入れ替えることは不可能であるのだから、他者を完全に理解することはあり得ないし、存在を証明することは出来ない、という一種の「孤独」であるとも言えます。
絶望的でありながら、しかし私はいつもその裏側で、「ならばいっそ自分が大切に思える人達のために今より前へ」と、一つの生きる希望や確固たる強さを抱いてやみません。剛健に、そしてロックンロールに生きていこうと思います。
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