naca npo法人アートコアあおもり
青森市大字新城字平岡160-1039 email: info@art-core.net

全国アートNPOフォーラム
アートNPOならではの新鮮なビジョンを社会へ提案していく、 ゆるやかなネットワークをめざして。
三澤章

 今日の日本は、市民ひとりひとりが、みずから自分たちの必要とするサービスを自分たちの手で作り提供していく社会へと、変化を遂げつつあります。 1998年に公布・施行された特定非営利活動促進法(NPO法)によって、この変化は着実に日本社会に広がり、ますますNPO活動の社会的重要性が増しています。  アートNPOは、市民自治の理念にもとづき、アートと社会の橋渡しを通して、幅広く領域を超えたNPOと連携し、豊かな市民社会を創出する役割を担っています。 アートは社会の変化を先取りする力を持っており、アートNPOは、社会を変革する潮流において大きな力を発揮できると考えます。 「アートNPOフォーラム」では、アートという共通項のもと、活動内容や形態を異にするさまざまな全国のアートNPOが集い、討論する場を設けます。 そして、個々の声を集約し、アートが多様な価値を創造し、社会を動かす力を持つ社会的な存在であるとの認識をもとに、アートNPOの意義を社会に訴え、それによってアートをめぐる環境が社会の理解を得られながら向上していくことをめざします。  全国で活躍するアートNPO同士のゆるやかなネットワークを構築し、NPO活動における課題や共有化されたニーズをもとに、社会的な課題の解決に向けてアートNPOフォーラムを開催していきます。

全国アートNPOフォーラムin青森 の 概要

 フォーラムを誘致した訳は二つあります。
 一つ目は、1999年のトヨタアートマネジメント講座in青森の開催以来、県内のアート関係の組織が怒濤のごとく活動を行ってきました。そして、いまも続けています。しかし、社会を変えようとする理念はもっているのか、活動がマスターベーションで終わってはいないか、検証は出来ているのだろうか。そんな、疑問が残ります。
 私たちはもう一度原点に戻り、アートの果たす役割やアートの持つ力を考える時期に来ています。そして、お互いの経験や知恵を交換し青森県の未来を語り合うことが必要だと考えました。
 二つ目は、県立美術館がオープンする4年程前の2003年、私たちは、県立美術館を将来、NPOがかかわって運営出来るようにしようと考える人々から相談を受けました。
 私たちは、折しも世界の美術館・博物館の運営実態の調査を行っており、世界では美術館等の運営はNPOが行うことが主流なっていました。そこで、是非NPOが運営にかかわるべきだと思い、提案を行ってきました。
 しかし、青森県は、将来運営を民間に任すにしても運営に関する基本データが必要とのことで県直営でスタートしました。
 現在、青森県内の施設が速いスピードで指定管理者制度に移行しつつありますが、私たちは、本来あるべき指定管理者の姿とはほど遠く、運営に関する請負金額が安い業者に決まっているにすぎないのではと危惧しています。本来あるべきすがたとは、その施設の持つ目的を考え、より良いサービスを提供するために知恵をだし運営を行うことだと思います。その大切なところが選定に反映されていなけれないけません。
 原因には、行政サイドの財政難もありますが、指定管理者制度について、行政がNPOや市民セクターの存在を理解していないということも考えられます。
 私たちは、青森県内の文化施設も近い将来、指定管理者制度に移行するであろうと考えています。そのときに、例えば、青森県立美術館が運営費の安いだけの業者に決まってしまっては、とんでもないことになってしまいます。 
 フォーラムを行う事で、また、NPOが結集することで、行政がNPOや市民セクターに関する認識を変えることかできないかと考えました。NPOの力、市民セクターの力を示す必要がありました。(アートコアあおもりを設立したのも美術館の運営に対しなんとかしていきたいという思いからです。)

 私たちは、ただフォーラムを行うのではなく、フォーラム開催に向け、アートをツールとして活用した場合に、アートで街を変えることが出来るのかの社会実験を中心商店街をまきこみ行うことにしました。そして、フォーラムで検証しようと考えました。
 社会実験のプログラムは「八甲田丸青春劇場(TAIZO)」「キッズ・アートワールドあおもり」「アート井戸端会議」「上を向いて歩こう」の四つです。詳細は他を見ていただくことにします。  
 このなかで「アート井戸端会議」と「上を向いて歩こう」の二つは特に重要な意味を持っていました。「アート井戸端会議」は、さまざまなゲストを招きながらアートを切り口とした「井戸端会議」を随時開催し、アートとの付き合い方や、鑑賞の仕方など、アートを身近にしていただくためのものです。「上を向いて歩こう」は商店街にアーティストやクリエイターが住み、制作し、発表することで「まち」の「何か」を変えようとする試みです。
 そして、フォーラムの会場では次のような意見がありました。
 青森市の行政の方
「始めは心配だったが、協力させていただいた。今後はアートの可能性を市の計画に盛り込んでいきたい。行政に出来ないところを民間の力で出来るようにできたらいいと思う。」
 商店街の方
「三ヶ月前、アートに縁がなかったが、今、アートツアーで説明している自分がいた。がんばろうとしているどうしであれば次の可能性は見つかる。アートが商店街に何が出来るのかのきっかけづくりとなった。」
 私たちは、社会実験のプログラムとフォーラムを通し、アートは人の気持ちを変えることが出来るのでは、そして、地域や街を変え始めるツールになるのではと考えています。そして、現段階で、継続することを考えた時、NPOという道具はきわめて有効な手段であると考えています。
 アートNPOは民の公益のあり方を提言していくことが大切です。私たちは今後、指定管理者制度に移行していくであろう文化施設の指定管理者のあり方について考える場を設け、文化施設を管理・運営していくためにはどのような資質が必要かを議論していきたいと思います。そして、提言していきたいと思っています。

(naca 理事)