処女作の「ボトル(瓶)」のシリーズから話は始まりました。
処女作にはその後の作品展開のすべての要素が
含まれているものだという考え方を述べ、自作にもそれが当てはまる旨、話が進みます。
山本さんの作品の主題は光であり、
すなわち写真そのものであるという風にまず自らの作品の本質が語られました。
そして次の「滝のシリーズ」に移ります。このシリーズは時間差で撮影された二つのカットを上下につないで、
作品化しています。山本さんは美しい風景をそのまま提示するのでは、作品になり得ないと考え、このように
上下に分断された作品になりました。
次の「山上の池シリーズ」では、やはり時間差のカットを今度は
左右につないで作品化します。
垂直性が強調される「滝」、水平性の「池」と二つのシリーズの後は、つなぐという作業はなくなり、
通常の写真に戻ります。
工場の煙突から水蒸気がモクモクと立ち上る写真のシリーズは、まさに「滝」のシリーズと
「ボトル」シリーズのコンセプトを踏襲するものであるということが、作家の言葉で納得いきました。すなわち、山本さん
のテーマが光であること、それが垂直性を持った形式で、煙、水、壜といった異なる素材を媒介として、
追求されていることがよく理解できました。
皇居の外側から撮影した「皇居」のシリーズは、お堀の向こうに
土手があり、その上に石垣が見え、またその上に森が広がっている風景です。その中心(画面においても主題においても)
は傾斜する土手なのですが、山本さんはその距離感が不思議というか、
曖昧だと言います。その辺のところがこのシリーズを撮る動機のように感じますが、作家自身もいまひとつ
このシリーズの課題がつかみきれずにいるみたいでした。
【続きはまた】
「皇居シリーズ」「沼シリーズ」(カラー)