「産む」・レトロ

ナイフが誰の胸にも隠れていて
 
ななつのアナタから
ナイフをつきたてられる
 
 
流すなみだ
からだじゅうを膨らませるように
怒りが
アナタから流れ出る
 
 
アナタがつきたてる
言葉のナイフは
すべてわたしの口真似だろう
 
 
しっているから
よけい哀しい
 
 
あなたははるか彼方から舞い降りた
 
何億という細胞のベールをくぐりぬけて
 
 
風に踊らされ
雨に痛め付けられ
 
それでも日の光を浴びに
わたしのいる宇宙にまいおりた
 
 
どうして神はあなたを
わたしに与えただろうか
 
 
あの夏
かすかに遠のく日差しの中で
わたしはあなたを産み落とした
 
 
薔薇色のつぼみがふくらみ
あなたは
丸まってころんと転がり落ちた。
 
 
そのときのあなたを忘れはしない
 
 
あなたが泣くと
わたしも泣いた
 
 
あなたのためにわたしが
生きている
 
 
そう想っていた。
 
 
 
いまもあなたの小さな頭をなぜると
ふと
 
 
その気持ちにもどれる
 
 
けれど
現実に有る
憎しみが
 
 
言うに言えないムズカシイ感情が
 
母性を逆なでする
 
 
いままでの歴史を
あきらめてきた歴史を
取り戻せぬ焦燥にかられ
 
 
あなたが憎くなる
 
 
あなたのおむつをかえ
あなたを抱いて
腱鞘炎になったことが
 
 
にくいのではない
 
 
いつかおとずれるであろう
反抗期という
 
さながら必要不可欠な道のりを
 
いざあるきだすと
 
 
うろたえるわたし自信が憎いのだ
 
 
産んだから
意味もなく
育てればそれでよい
 
 
そういう心が煮えたぎるのが
コワイのだ
 
 
産むことは
あなたの歴史を刻ませることになる
 
 
あのとき
あなたを母体にとどめたまま
 
 
この世によばないほうが
或いは
 
良かったのだろうか
 
 
疑問がくりかえされる
脳裏の奥で
 

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