浮き舟

神谷鮎美


私を乗せた舟が漂う
波のまにまに
傾く夕日が
海に呑まれる
ゆるやかに
すべり落ちる刻(とき)

漂う舟は
行方を知らず
時のいたずらに
静かに揺られ

海風が
岸のことばを運ぶ
記憶の彼方へ
去ろうとしている
「ふるさと」ということば

岸は私を呼んではいない
私だけがそこを懐かしむ
だからいつまでも
舟の上



詩の投稿作品・1997年


詩の投稿作品


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