「手」・鈴木どるかす

マーノを 殺したい
海辺の砂に 名前を書いた
波が押し寄せ 消すあいだ
小石を持って 波を見ていた

大きな波が押し寄せ
わたしの足を濡らしていくと
絶ちきれなかった魂を洗い
マーノが消えた

しーね、しね、しね
しーね、しーね
凍った思いが
風の中から聞こえてくる

騒いでいる波に
小石を投げようとしたら
とつぜん、海の裏側からめぐってきた風が
わたしの手から 小石を奪い取り
もといた場所に 小石を落とした

湿った風が わたしの中にすうっーと入ってくると
凄まじく渦巻き 手から出ていった
手を見ると 指紋が消えている

指紋をもぎ取った風は 砂をゆさぶり
巨大なマーノの文字を書き上げると
マーノのなかに指紋を流し込んだ
わたしの指紋が
闇の底から黒々と現れてきた

指紋に 砂を被せてから
わたしは激しく泣いた

「MANO」はエスペラント語で「手」なのですが、この詩とはあまり関係はありません。


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