「可視」

取れそうな釦が一つ

銀河にぶら下がっている

何をそんなに必死で耐えているのだろうか

かつての有様を思いつつ

歯を食いしばっているのだろうか

なりふりかまわず

「蜘蛛の糸」の主人公のように━━


過去の時間は眼に見えて

未来の時間は眼には見えない

と誰かが言っていた


取れそうな釦は

ときどきキラキラと輝きながら

過去の時間にぶら下がっている

何をそんなに必死で耐えているのだろうか

絶え間なく

未来の時間は過去の時間へと移行し

切なさをともなって眼に見えるものとなる


取れそうな釦が一つ

銀河にぶら下がっている

何をそんなに必死で耐えているのだろうか

━━手の届かない銀河は限りなく澄んでいる



柴崎昭雄・詩作品


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