「時代」


僕が生まれる前の
父の船員手帳を開くと
色褪せたモノクロの写真が
スーツにネクタイで居住まいを正している
その裾を刈り上げて整った頭髪は
現代の若者のそれで
流行は繰り返されていることに
改めて気づかされる
その僕の知らない父は凛々しく
逞しくさえある
船員手帳には
日本各地の有名な港の名前が記されている
家族を養うために働きづめだったろう
そこには今の僕よりも若い父が居て
僕を見つめている

数十年経た今
やせ細った足で父は立っている
強く
そして弱く
体内に闘うものを得て
それと対峙する
辛い時はゆっくり休んでください
疲れた時は座ってください
ただそれだけしか言えず
見守るだけしかできない
ただ僕もそこに居る

 

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