「電脳幻想」

パソコンの向こう側の日だまりにたどり着く
キー操作で誰でもたどり着ける場所
回線を通り抜ける刹那
ちくりと胸が痛む
孤独の果ての
幻想風景にたどり着き
画面の中で
自分の存在を確かめてみる

クリック
つかのまの現実逃避━━
今日は誰もいない?
「おーい!」と大きな声で呼んでみた
その声が喘ぐようにこだまし続ける
リアルな太陽がやけに眩しい

パソコンの向こう側の荒野にたどり着く
ひとを恋う時間の延長線上
そこにはぼくのほかにも誰かがいて
大きく手を振っている
それと同時に心臓の鼓動と
弾んだ息づかいが聞こえてくる
こんなところにもにんげんの鼓動があるのか
ひとの息づかいがあるのか

やがてかすかな体温も感じられてきた
ぼくも生きているんだな
その体温を感じながらそう思った
訳もなく涙が出そうになり
それを堪えるように
ぼくも大きく手を振った


柴崎昭雄・詩作品


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