★第17回Z賞大賞作品・柴崎昭雄


芽吹かんと水をたらふく飲み込みぬ
足跡もけもののかたち冬銀河 
なきつくし青をつくして月下の影は 
曇天の鴎かぞえて泣き笑い 
一灯を生きつらぬかん点灯夫 
泣き道化芒ヶ原をまっしぐら 
ところどころに灯りともして飯を食う 
炎天の影よ何かが尽きるまで 
漁り火ともるぼくのいのちと呼応して 
踊りつづける次郎の掌にも雪だまり 


白蕪や風の話の尽きぬ父と 
展(ひろ)げれば父の海図の深き呼吸 
父はまた波と交わる神懸かり 
父は子の梯子をはずす夏銀河 
木枯らし鳴って父ことごとく囚われる 
みぞれ降る父の行進曲流れ 
芒原すっぽり父の背を隠し 
笑い袋を覗くと太き骨ばかり 
雲梯(うんてい)を家族一列進むべし 
雨上がりみないっせいにけものの貌に 


秋雲の速き流れよごろりと木馬 
血の濃さへ傾く椅子の夕焼け小焼け 
鼻すじは道化どこまで青空か 
ひるがえりひるがえりして薄き胸板 
影踏みの少年髭が生えてくる  
にんげんも桜も空もちんどん屋  
まんまるくなって祈らんヒトケモノ 
ゆうぜんとしぐれる鬼の面の裏 
ロンド響けばたちまちピエロ立ち上がる 
ひまわりの影もはげしく呼吸せり 


柴崎昭雄・川柳作品


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