柴崎昭雄・川柳


・2001年12月25日更新。

水餃子この世長いか短いか


引っ張ってみても動かぬ父が居る


・2001年12月18日更新。

恋うても恋うてもどうにもならぬ角砂糖


コスモスの並んで爺と婆になる


・2001年12月11日更新。

ひまわりの横顔口笛吹いている


向日葵や老いたる父も母も陽だまり


・2001年12月4日更新。

永遠の線香花火 三十六度五分


直球をつらぬき通し老いゆくか


・2001年11月27日更新。

少年の口笛夕日追いかける


綱引きも弱くなったな なあ父よ


・2001年11月20日更新。

骨組みも満身創痍 父の傘


くるくると傘を回して老いてゆく


・2001年11月13日更新。

墓場まで開かぬ傘が一つある


春の海凪どこまでも眠り込む


・2001年11月6日更新。

彼岸へとつながるごとくガクアジサイ


なぞなぞの答えが生と死と水と


・2001年10月30日更新。

しゃぼん玉がこわれるまでの ひとのかたち


少年に髭 塩分濃度濃くなりぬ


・2001年10月23日更新。

ガラス溶解 はしゃいでしまう君の体温


氷ひとつぶ口にふくんで葦の部屋


・2001年10月16日更新。

肉体のやがてやがての 星 ひと握り


冷たさも温もりも秘め角氷


・2001年10月9日更新。

早々と蜩 氷まだ解けぬ


超新星爆発 君を恋うている


・2001年10月2日更新。

スイッチONとOFFの間の全力疾走


ビー玉の丸さはじめとおわりまで


・2001年9月25日更新。

終わりなきしりとり残し修司の忌


じゃんけんの最初のグーが照れくさい


・2001年9月18日更新。

コンビニへはじめとおわり買いにゆく


はじめから影 おわりまで影 呼吸音


・2001年9月11日更新。

八月の低温注意報 少年


歯磨きの口にひろがる冷夏かな


・2001年9月4日更新。

アカシアや紙婚式の朝なりし


ひまわりの静寂 守りとおさねば


・2001年8月28日更新。

五月かな嘶くかぎりいなないて


五月に生まれ五月つくづくあっけらかん


・2001年8月21日更新。

曇天に一語を発すかもめらも


葱きざむ妻よ覚悟は揺るがぬか


・2001年8月14日更新。

彼岸此岸嬉々と覗かるレノグラム


どんなかたちの空なるや父を背負えば


・2001年8月7日更新。

曇天や膀胱鏡の全視界


新月や家族みんなでつんのめる


・2001年7月31日更新。

落書きの机の行方 少年期


ゆうやけのままのベッドの荒野だな


・2001年7月24日更新。

幾千の生死の話ふきのとう


過去現在未来のなかの魚だな


・2001年7月17日更新。

ばらばらの家族が集う春の部屋


万作が噴き出す 生が噴き出す


・2001年7月10日更新。

割れそうな壺を抱えて父や母や


目と鼻と口が残りし雪だるま


・2001年7月3日更新。

何にも言わぬ鈍痛 春の雪だるま


一灯を抱え一体春眠す


・2001年6月26日更新。

月光の我が身もやはりあおあおと


雪だるま倒れんとする 二月尽

雪だるま倒れんとする 二月尽


・2001年6月19日更新。

父あおし酒を飲めなくなって雪


音のない雪夜しずかに果てそうだ


・2001年6月12日更新。

夕焼けの若き父なる雪だるま


雪よりも白き息吐く父の目眩


・2001年6月5日更新。

父病めり道路工事のまだ続く


雪舞いの父の一歩も難儀かな


・2001年5月29日更新。

雪解村地図こつぜんと現るる


雪解水流れる方へ生も死も


・2001年5月22日更新。

雪だるま幾千作り春を迎えん


敗者復活溶かせるだけの雪溶かし


・2001年5月15日更新。

妻が飛ぶリップグロスをつけた日は


春の灯をともして父の椅子は微熱


・2001年5月8日更新。

病床の父の上にも春の雨


春の部屋春の眠りをたまわりぬ


・2001年5月1日更新。

地吹雪はやまずに父の喉ぼとけ


願わくば銀河鉄道予約する


・2001年4月24日更新。

足萎えの父の足元雪眩し


降るは降るは恋の大雪注意報

降るは降るは恋の大雪注意報


・2001年4月17日更新。

屋根の雪の嵩増すごとのヒトひと人


雪に影残して生きる証とす


・2001年4月10日更新。

木枯らしの犬よりはしゃぐ日もありぬ


新世紀真顔も少し修正す


・2001年4月3日更新。

除雪車通過誰も彼もが雪こんこん

うかつにも少女と月の話かな


除雪車通過誰も彼もが雪こんこん


・2001年3月27日更新。

父も少年かぞえあぐねる冬銀河


耳たぶがきりきり痛む冬の案山子


・2001年3月20日更新。

少年に乳房の記憶 冬の雷


光る舟を隠し持ちたる少年期


・2001年3月13日更新。

雪祭り一灯ともし終えて少年

雪渡りかすかに狐貌になる


雪祭り一灯ともし終えて少年


・2001年3月6日更新。

ありふれた耳のかたちをして少年


夕暮れは右の頬から暮れてゆく


・2001年2月27日更新。

地吹雪の中をゆく時けものめく


山背吹く人間ぶらりぶらぶらり


・2001年2月20日更新。

ゆっくりと枯れ野が晴れる母の寝返り


姉のゆび母に似てきて月に晒さん


・2001年2月13日更新。

秋雨のしじまも妻の花図鑑


なにもない頭上の夜を待ちわびる


・2001年2月6日更新。

父の背は波母の背は月こつぜんと


置き去りのほおずき母の手も朱き


・2001年1月30日更新。

口笛や父はくるぶし細くとも


益荒男の哀歌も声のかぎりかな


・2001年1月23日更新。

波から波へ父の背を押す風吹けり

 

芒ヶ原に兄消えてから風の音



・2001年1月16日更新。

晴天走り曇天走りまだにんげん


浜風に晒されつづけ喉ぼとけ


・2001年1月9日更新。

父抜糸月は白く見えているか


君もまた車椅子かな友の婚


・2001年1月2日更新。

新世紀鈍足でゆく年男


笑い声山にこだまし芋煮会


柴崎昭雄・川柳作品
★柴崎昭雄・川柳作品 2000年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1999年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・下半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・上半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1997年掲載分


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