柴崎昭雄・川柳


・2000年12月26日更新。

秋の空澄むだけ澄んで父手術


電脳原野怪人二十面相なり


・2000年12月19日更新。

波の音荒ぶる君の体温よ


やあやあと挨拶をするネット街


・2000年12月12日更新。

月仰ぐ冷たき手足さするべし


君の頬も冷たき月は冴えに冴え


・2000年12月5日更新。

エスケープキーを何度も押した夜


さびしんぼ電脳原野闊歩する


・2000年11月28日更新。

電脳原野眼精疲労心地よし


柿はまだ青し生き下手まだつづく


・2000年11月21日更新。

すすき眺めて一緒に揺れている真顔


いちじくを頬張り堕落論つづく


・2000年11月14日更新。

父の脚細くなりゆく船外機


少年の性に目覚めしピラカンサ


・2000年11月7日更新。

蝉忙し 両手両足ふんばりぬ


父の声が浜に響いて蜩も


・2000年10月31日更新。

ひまわり抱擁 青空の匂いする


放熱がつづく体内炎天下


・2000年10月24日更新。

夕焼け小焼けぼくもひとつの空を追う

 

 

颯爽と郵便屋さん臥す身にも

 


・2000年10月17日更新。

酒あれば河童のおやじ冴えに冴え


病室の天井 真っ白な網膜なり


・2000年10月10日更新。

水音の家を囲んで河童一族


沖をながめて河童逡巡しておりぬ


・2000年10月3日更新。

泣かぬまま外野フライを待っている


コスモスも揺れる ゆっくり酔いつぶれる


・2000年9月26日更新。

段ボールが積まれてみんな闇の中


月を見てきた狼月を見て果てる


・2000年9月19日更新。

炎昼の修司家出をすすめおり


思い切りけんかするのも夏銀河


・2000年9月12日更新。

これからは妻と呼ばれる蛍点滅


八月十六日新郎新婦入場す


・2000年9月5日更新。

晴れの日も病室の灯のともり続ける


病室のカーテン越しのいのちかな


・2000年8月29日更新。

ごめんなと言うも不器用夏銀河

 

露草をゆらして君は嫁ぐという

 


・2000年8月22日更新。

晴れの日も傘くるくると母のよろめき


遠き花火で運動会のはじまりぬ


・2000年8月15日更新。

浜風に吹かれて父の楽器かな


たんぽぽの綿毛どこまで少年期


・2000年8月8日更新。

白昼の頬杖幻想 桜桃忌


六月の花嫁青き空をたずさえて


・2000年8月1日更新。

水音絶えずみなみなみんなみんな老い


名無し草黄も紫も毅然とず


・2000年7月25日更新。

磨りガラスの向こうにも「生」春乱反射


「太郎」という子犬たちまちわれは少年


・2000年7月18日更新。

菜の花畑に鍵をひろいに鍵をすてに


菜の花満開君の寝息を聴いている


・2000年7月11日更新。

いちにちをあわただしく母 こぶし咲く


もくれんの白に問わるる泣きだるま


・2000年7月4日更新。

桜前線北上 未だ少年目を開く


さくらから今年も聴こゆ笛太鼓


・2000年6月27日更新。

ゆらりゆらりいのち晒して春の風待つ


季節はずれの花火を眺め泣けないおとこ


・2000年6月20日更新。

春泥をころがりつくす 君恋うて


雨の日の君からも雨こぼれ落ちる


・2000年6月13日更新。

君のいる位置から白線を越えてこい


春雷や思いを君へ届けたし


・2000年6月6日更新。

父の海よ かもめの声にならされて


嘘つきの取るに足りない福寿草


・2000年5月30日更新。

芽吹け芽吹けと飯食う春のひとりのけもの


夕まぐれひとりの影を笑い飛ばして


・2000年5月23日更新。

ケイサツヲシンジルモノハスクワレル


にょきにょきと少年事件果てもなし


・2000年5月16日更新。

すこしずつ君も夕焼け小焼けかな


春の鳥来てこの身起こせば光の野


・2000年5月9日更新。

菜の花にも痛み どこまで青が展がる


春灯に癒されること ひと恋えば


・2000年5月2日更新。

牛の舌愛することもそのように


ゆったりと木乃伊になってゆく愉悦


・2000年4月25日更新。

コンコース誰かと歩き泣き明かす


冬銀河恋えば恋うほど冴える冴える


・2000年4月18日更新。

夢を抱えて凍土に突っ立っている


聖夜かなぬくもり一つ胸に受けて


・2000年4月11日更新。

時化の日の父の影法師ひらひら


にぎやかな父の酒なる 舟漕ぐや


・2000年4月4日更新。

一灯の下で笑って 泣いて母


何も言わずに二人で見てる淡雪 粉雪


・2000年3月28日更新。

仰向けのおとこのうえにも銀河あり


一月の道化の服も一月いろに


・2000年3月21日更新。

真冬日の一体熱を帯びてゆく


みぞれから雪へ 笑えるだけ笑う


・2000年3月14日更新。

ごうごうと地吹雪 虜囚身構える


みんなみんな白装束 雪の夜は


・2000年3月7日更新。

屋根を滑る雪の轟音友逝けり


ゆれながら牡丹雪舞う 友 如月


・2000年2月29日更新。

牡丹雪一語も告げず父の夜


降るや降るや人恋うように雪の嵩


・2000年2月22日更新。

獅子舞の舞えば舞うほど父の背中を


明けた日に遠く権現様の音凍てる


・2000年2月15日更新。

みぞれ野に笑いどおしの大喜劇


父の咳ところどころに闇が生まれて


・2000年2月8日更新。

凛と露草 闇ひろがれば灯をともす


少年が行きつ戻りつ石の橋


・2000年2月1日更新。

影踏みに君も加わるとんからりん


いわし雲水溢れくる体内を


・2000年1月25日更新。

祭り終えて影たたむべしちんどん屋


宛先不明で戻るメールの冬の深さよ


・2000年1月18日更新。

ひらりひらりと雪舞うときの喉仏


海も空も鈍色 雪を恋う時は


・2000年1月11日更新。

縄文の空を夢見て収穫祭


本日晴天桃たわわなる哀しさや


・2000年1月4日更新。

雪    満ちる  幾千年を 越えて  来て  



柴崎昭雄・川柳作品
★柴崎昭雄・川柳作品 1999年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・下半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・上半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1997年掲載分


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