柴崎昭雄・川柳作品

1998年・上半期

★柴崎昭雄・川柳作品 1997年掲載分

・5月26日更新

恋語り真冬の空もいとわずに


冬帽子目深にかぶり泣き地蔵


雪積もる ひと恋う丈をかるがると


・5月12日更新  「津軽三味線奏者高橋竹山逝く」・2

竹山死す  太き背骨を津軽に残し


門付けや少年高き声をあげて


原野果てなしはげしき三味線(しゃみ)の呼吸聴こゆる


竹山の越えた海峡春を兆す


・5月5日更新  「津軽三味線奏者高橋竹山逝く」・1

竹山の三味線(しゃみ)吹き抜ける喉もとを


よされ節を打つばちの音の魂(たま)受けり


三味線打てば津軽原野の雪また雪よ


・4月28日更新

生誕の五月の枕はじけるはじける


たてがみや闇をいくつも抜けてきて


病室に凛と立ちたる葦の刻


・4月21日更新

菜の花の深きところにコメディアン


菜の花の家族もろとも笑い講


歓声の兄も全身雪まみれ


・4月14日更新

ひとひとりはっしと生まれ冬の天


雪の国を踊り明かせよ太き骨


晴天のフォレストガンプ追い越しぬ


・4月7日更新

地吹雪よ一足す一は二のままに


氷柱が伸びる音する母の骨粗鬆症


窓越しの冬の晴天  父も晴天


・3月31日更新

枝たわわ灯りも夢も太き骨も


北に生まれん さても荒々しきさくら


漂泊の歌たからかに兄の声


・3月24日更新

道化師の形(なり)して仰ぐほうき星


ニュースはしきり われも名もなき一樹なり


父も子もさてもけものの形(なり)をして


・3月17日更新

春の樹もわれもはげしく産声す


産声よ蔓いっぽんに兄よ姉よ


彗星や打ち砕くもの打ち砕き


・3月10日更新

迸る血よ この血はいつか父が流した


翳りなき野に並びたる姉の雛


嘶けば素面のおとこ躍り出る


・3月3日更新

諸手をあげて太郎迎うる月下の家


月を取ろうと父の梯子が伸びてゆく


ざらめ雪の荒き手触り友逝けり


・2月24日更新

雪まみれいのちの紐を握りしめ


体温上昇さても人恋う冬木立


枯野をゆく母の歩幅の正確な


・2月17日更新

生きるべし一途な陽射し身に受けて


展げれば父の海図の深き呼吸


コスモス群生笑い上戸の家族らと


・2月10日更新

ひと恋うや火星探査機着陸す


月をともして問わず語りの母の指


彼岸花それぞれの背の赤や黄や


・1月30日更新

木偶の掌の鏡に秋の生きたき空


柿の実の朱に戸惑いぬ車椅子


鰯雲太き絆も散り散りに


・1月16日更新

一月のひと日なにかが始まりぬ


旅つづく太郎次郎の耳朶凍てるとも


晴天の血は鮮やかに流れるか


どこまでも晴れ一族の貌の輪郭


ひたすらに蟹食う  遠い少年賛歌

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