柴崎昭雄・川柳作品1997

1997年

・12月19日更新

道化師の形(なり)して仰ぐほうき星


彗星や打ち砕くもの打ち砕き


父も子もさてもけものの形(なり)をして


・11月21日更新

孤影とやドアというドア開け放ち


またしても空想癖の馬なりし


粥をむさぼる 音なきままの鰯雲


父原野手毬まっすぐころがりて


・10月31日更新 ★「川柳Y」掲載・「電子メール」

瞬時なる電子メールの暑中見舞い


「お元気ですか?」と電子メールの文字の体温


電子メール送信「空は晴れている」


メール送信にんげんからにんげんへ


返信のメールあなたも木霊を待つか


限りなき電子メールの宇宙論


宛先不明 ただ送信のボタン押す


・10月10日更新

ひまわり静寂「悲しき玩具」は本棚に


ほうほうと一語一語を父の雲


体中を叩くと谺しておりぬ


海青し畳も青し少年期


・9月26日更新

飄々と孤影はしらん曇天から曇天


茶漬け食うひとりの海を揺らしつつ


忘れゆくもの 秋のひまわり反りゆくか


曇天にびっしりとある北の鈴


・8月29日更新

体内の荷崩れ遠いひとを恋う


これもいのちか秋の花火を持てあます


寝転んでみても喫水線がある


真昼にもたやすく響く喉ぼとけ


・8月15日更新

音のない夏よ八月十五日


菜の花やどれも烈しき呼吸して


目醒めるも積み木遊びも数えうた


薄紙の夜に薄紙の人体図


・7月13日更新

桜桃忌両手に荒野あるごとく


菜の花の咲きぬ母にも開かずの間


人影を曳きずる春のけものだな


石ごろり人のかたちのはじまりは


まっすぐに鳥墜ちてくる洗面器


沖は曇天かもめをまねているのだが


母の手のたくましくありほおずきよ


父の背を越える話を父とする


人抱けば人のぬくもり菜の花盛り


閉ざさるる柩のすきま花日和


人形のうなずく記憶さくらの記憶


花図鑑はげしく抱擁するものよ


青いけものになりたる兄とおとうとと


かげふみをして昏(く)れ残る父の踝


かげろうの椅子よ骨肉置き去りに


けもの坂夜の家族の石あそび


蜩よ父これまでもこれからも


蟹青きまま横たわり月ひとすじに


りんどうのごとく呼吸(いき)継ぐ夕昏れ坂を


動脈静脈道化の月は褪せゆくか


這いだして孤影しずかに雫せり


母の寝息よ 霧の芒は身の丈に


柴崎昭雄・川柳作品
柴崎昭雄・詩作品
木馬館トップ