柴崎昭雄・川柳


(川柳はブログ↓の方に掲載していきたいと思います)

柴崎昭雄ブログ


現代川柳「新思潮」会員作品 3月No 65

ほうほうと雪守人は雪を待つ

初雪も肉体もまだ日の匂い

白鳥飛来 睦言ぽつんぽつんぽつん

はつゆきの華いとしさをつのらせて

嘘つきの満月 こわれもの注意

夕焼けてしまったあとも猿回し

反省の次郎も逝って武装論


現代川柳「新思潮」会員作品 2004年1月No 64

母を呼ぶたびに芒野から返事

驟雨来るみんなが走らされている

朝凪夕凪父の面影一途にて

月光が身体に沁みる夏布団

なぞなぞが解けた順から時雨れてゆく

水瓶を覗いてからの笑い上戸

青芒不良少年はしゃぎだす


現代川柳「新思潮」会員作品 11月No 63

ぼくもまた影のないままけんけんっぱ

ぶかぶかの帽子をかぶり父子かな

飴玉をごくりと飲んで不惑近し

ドクダミの十字 背中のいちめんに

たまねぎ干され兄も干されて夕焼けや

遠花火少し遅れて音も死も

冷夏去る一つの覚悟置き去りに


現代川柳「新思潮」会員作品 9月No 62

アカシヤの無罪放免なる白さ

こんなにも晴れて森閑 生誕日

遠雷や歯ブラシ少しずつ背く

血の濃さを問われて父を正視する

待合室は賑やかひとりずつ病棟へ

病室の影ことごとく拭き取られ

この身から剥がれるものもなく夏よ


「双眸」双眸集 3月8号

拍手喝采二足歩行の猿なれば

指鉄砲少年刑に服すべし

静脈も青し除雪車通過せり

理由はない あわあわぼくも逃亡中

笑わなくなった猿から捨てられる


「双眸」双眸集 2004年1月7号

じゃがいもがころがってゆく多数決

淡々と汚されてゆく青芒

軽薄なおとこの部屋の青い空

脆い月だったよ 飲んだくれだった日

生きている日向ぼっこの末席で


点鐘11月101号

泣き終えてさて十月を生きるべし

コスモスの仄か院外処方箋

ひまわりは笑い上戸でなし 九月

月狩りの梯子を降りてこない父

歯ブラシの硬さ 開かずの間は冥(くら)し

われもまたすこし惚ける里神楽


点鐘8月100号

百の鐘鳴らして月下 百の羅漢

ケータイでころころ笑う白い桃

大義名分 百円ショップから戦

うたたねのこめかみ 兵の靴音す

兄の靴大笑いしてころがりぬ


「双眸」双眸集 11月6号

糸とんぼ血すじひとすじ兄脆し

少年の密かな性やへびいちご

秋刀魚解体浅い眠りを繰り返す

昼顔も一語を発し惚けるか

隠れ家に音霊言霊 月光と


「双眸」双眸集 9月5号

ヤマセ吹く背中どこまでがらんどう

声発し父の帽子も膨張す

からっぽの柩を振ると水の音

スプーンの曲面 今日ものっぺらぼう

信じてみるか 枕を並べている


現代川柳「新思潮」会員作品 7月No 61

たんぽぽに憧れつづけ一家族

桜満開眼精疲労進行中

春眠や身体の破片擬音せり

時計羅列幾人の生 いくにんの死

木鶏のゆるがぬ記憶 花嵐

さくら咲く 散る 生きている着信音

春日向ころころ笑うわが妹(いも)も


現代川柳「新思潮」会員作品 5月No 60

   「ゆきのかたち」

氷柱ぽとりつらつら星の夢を見て

雪渡り渡りきるまでひとのかたち

冬銀河やがて仰向く雪だるま

生者死者夜毎始まる雪合戦

ちちははを置き去り 蛍光灯の下

たんたんと雪ふる生に執着す

雪礫あっけらかんと葬られ


「双眸」双眸集 7月4号

不精髭なる少年の指眼鏡

帆船を追いかけ父も水平線

どこまでも見渡す一樹 彼岸此岸

菜畑で目覚める 幻想家族かな

花まみれ春泥まみれ生誕日


「川柳のつどい」6月

天気雨なにもない日も父の祭り

水鉄砲の戦争ならば参加する

椅子四つ並べて家族 永遠に

席題
のどぼとけ一個で風にたちむかう


ガラス拭きばかりしている白昼夢


現代川柳「新思潮」会員作品 3月No.59

気付かれぬように母泣く水族館

家族みないびつな雪を掌に集う

箱庭の中で大きな欠伸する

日の丸を担ぐ人らの寓話かな

独りの呼吸 夕陽が壊れてゆく

病院の長椅子つづく雪晴れ間

雪吊りやわれもつられて人恋いぬ


「双眸」双眸集 3月2号

家系図を彷徨う捕鯨船ひとつ

踊る木偶うれしいときも無心なり

カラータイマー点滅 笑うしかないね

モニターの中に魚飼う青い部屋

雪こんこん全身産毛にして眠る


「双眸」双眸集 1月創刊号

空澄んで秋刀魚の青さ死のあおさ

夜を泳ぐ左曲がりの背びれにて

捕鯨船浮かべ少年過呼吸症

てのひらのやわらかすぎる父の月

月家族点呼ばかりがまだつづく


  現代川柳「新思潮」会員作品 1月No.58

幻のおとうとふいに秋の雲

秋晴れの国道西へ快調に

柿ひとつ手にして猿蟹戦の中

芒野のそのいっぽんと話す父

祖父戦死飛行機雲はまっすぐで

枯れあざみいつも青空膨張す

飛べるかもしれない母の骨粗鬆症


2003年年頭吟

ひつじにも益荒男がいて遠き夢


現代川柳「新思潮」会員作品 11月No57

立葵いまだ少年少女かな

少年の未完の空の青紫陽花

どくだみや父系ひたすら病み抜いて

ひまわりはやっぱり笑い通すべし

ふいに蜩ふいに少年顔上げる

台風一過ひとつ残っている柩

よく切れるナイフ 蜩とめどなく


現代川柳「新思潮」会員作品 9月No56

掌の上のかんかん照りをどうしよう

アナログの月が出ていてホッとする

笑ってはいけない空を見た土偶

泥まんじゅうあっという間に売り切れる

ぷいと横向くシロツメクサの細き顎

どくだみの十字の花やひざまずく

鉄線のだあれもいない昼の家


現代川柳「新思潮」会員作品 7月No55

春めいてゆく朝 ぼくの体温も

春光にわっと裏返すものあり

似た者同士の気恥ずかしくも大笑い

何度でも転んでもよし春の地図

饒舌な日なりたんぽぽ車椅子

晴天なり介護リフトもたんたんと

句集開くと「蛍」点滅 たましいも


現代川柳「新思潮」会員作品 5月No54

 「リピート」

寒立馬その父母も立ち尽くし

冬の灯を父と囲んで魂ゆらす

エンドレスリピート髭がよく伸びる

雪解けや雪国人は影を濃くして

また少し痩身となりゆく雨水(うすい)

紙一枚くしゃくしゃにわが冬尽きる

声発し歩きつづける二進法


現代川柳「新思潮」会員作品 3月No53


初雪に残響混じるテロの空

だんだんとからっぽになる父の壷

父子の雪 電気ポットが沸騰中

雪晴れ間院外処方箋を掌に

窓という窓凍てついて父病めり

癒えればまた駆けめぐるなり雪の馬

アフガンがテレビに映る 雪の静寂


 

・2002年3月 かもしか

窓外は初雪 部屋の真空管

足萎えの父や初雪身に受けて

初雪や父がだんだん白になる

根雪かな遠い馬橇の音降りて

「今日もコロッケ明日もコロッケ」元旦


・2002年1月 かもしか

秋雨のあとに残った父のらくがき

母の骨がだんだん透ける秋晴天

よってたかって少年の樹を伐っている

掌の中の蝉の震動 わが鼓動

聖戦の空 青空がフリーズす


・2002年1月 新思潮No.52

少年の影永遠に玩具なり

ひるがえる鴎見あぐる人間賛歌

パソコンはフリーズ 訃報容赦なく

若き日の母の話よ霜降りる

電話線のどこまでのびて淋しがり

朝顔や素直になれぬ無精髭

錠剤をひとつ減らしていわし雲


・2002年2月12日更新。
映画「千と千尋の神隠し」・2

「生きている不思議」ビー玉ころがしぬ


「死んでゆく不思議」 たまごの割れる音


鮮明な影落ち着かぬ真夏の陽


・2002年2月5日更新。
映画「千と千尋の神隠し」・1

橋の向こうの神々のまち 人々の町


「釜爺」のいつも忙し声高く 


よろず神かくも賑やか人知れず


「カオナシ」が言霊発す渾身の


・2002年1月29日更新。

雪よ降れ眠りに入るみんなみな


馬の背に跨る夢をみておりぬ


・2002年1月22日更新。

壜の中の終焉のないしりとりよ


ふるさとに生きる真白い息を吐き


・2002年1月15日更新。

冬晴れに身構えている案山子だな


みんなそろってFF暖房とりつける


・2002年1月8日更新。

人を恋う野菜スープは飲みごろで


グラタンはぐつぐつ自衛隊は派遣論


・2002年1月1日更新。

いななけよ 二頭の馬の背にも雪


★柴崎昭雄・川柳作品 2001年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 2000年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1999年掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・下半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1998年・上半期掲載分
★柴崎昭雄・川柳作品 1997年掲載分


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