「さびれている動物園」熱帯動物園より・鈴木どるかす

獣の匂いがずっと走っている
錆びついた檻のある
ジョホール・バルの動物園にきた

何十分歩いても
客は旦那さまと二人だけ

檻をゆする音が響く
客を慕うような音が聞こえる
いきなり猿の手が  のびてきた
ビックリ人形のように  直立不動になっている
ただの人間の  わたしに
猿は金網に背中を押しつけてきた
わたしの手の届くところで  毛先が反っている
猿の背中を掻けということだ
わたしはぎこちなく
指先に力を入れて  ごしごしと擦った
サルノ  セナカ
ワタシノ  テ
ドウレツニ  ナッタ


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詩の投稿作品・1998年後半


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