「ちひろの絵の中に」・なっつ


あなたはちひろの絵が
好きだった覚えているわ

若い母の首筋に
抱かれた子の持つ赤い花

飾り立てる暮らし
見栄坊な暮らし

ほんとうのことは
ほんとうじゃなくなっていった


公園のベンチ
夜が落ちてくる
あなたと
わたしの上に

友達でいたい
哀しみの鼓動
星になる
月になる

そして

涙になった


いま
私はしろい小児科の待合室で
やわらかな命を
だきながら

ふと壁の絵を見たらば

ちひろの描いた
あの
絵が掛けてあった


ときめく年齢じゃないくせに
おかしいね

おかしいね


おかしいね


涙コロコロ

「ママどうしたの?」

「なんでもないわ」



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