「丁寧な日常」・なっつ


ご婦人は、たいそう花がおすきと見える。
日溜りをもてあそぶ子猫の髭を
そっとブラシで梳かしながら
花びらの垂れた花がないかさがしている。

アーチの垣根から
ときおり覗くこどもたちの、
小さな掌に、
冬めいた紅い木の実を乗せてやると、

次ぎの週末には
そこに糸を通した首飾りにして、
ご婦人にそっとくれるのだった。

ご婦人は編むあてのない、
枯れ葉色の手袋を編む。
そして、
もしも子猫が凍えたら、
足にそっとはめてやるのだった。

ご婦人はそうして、
煉瓦の暖炉に薪を投げては、
ぱちぱちとはじけるオレンジを見つめている

学校が退けると、
良く磨かれたガラスの窓を
叩く小さな手が見える。

ご婦人が、
泣き腫らしたハンカチは
水色に染まりすぎて、いまでは
青い空に溶けてしまった

やわらかなミルクの子(かつて彼女の胎内にいた子)の、
写真立ての在り処はだれも
知らない

ただ、ご婦人は、
午後のひとときを、
とっておきのアップルティ−と、
焼き立てのクッキーを
子どもたちにそっと差し出して、

粉だらけの手が、
星座のジグゾ−パズルをはめこんだり、
金色の毛糸で、
綾取りをするのを
笑いながら
見ている・・・。



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