「至福」・レトロ

心の底で
うずいていた情緒

それは
手の届かぬものへの儚い想い


想えば想うほど

遠ざかるのに


寝顔安らかに
眠れるわが子よ


たったひとつしか
生み出せなかった命よ


なぜか?と問われるたび

さんじゅうごまでに
もうひとり


そう問われるたび

胸がちぎれて

いくど血を流したろう


それだけは不可能である

けれど

あなたが育つにしたがい

それが日常となる



わたしは恋したときと同じく

ひとりのあなたのために

髪を梳いて
折り鶴をつくり

上履きを洗い

眠る前には
尻取り


それが至福でなくて
なんであろう?


いいたい人には
言わせるのだ


風が吹けばそんな言葉は
藻屑になり消える


心の底で
作り出せる幸福

子のある人も
子の無い人も

愛を信ずる人も
そうでない人も


いまを至福と想おう



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