「少女」・レトロ


煤けた頬をしたその少女が
ニセ銅貨を差し出した

大陸のあどけない少女よ

黄砂の舞う町の
駅の前には
人力車がまだならぶ頃であった


あなたの兄は
針金を飲みこんではおなかに入れ
再び口からだすという
芸当をやってのけた・・


ガムをはきすてるように
友は言った


せっかく働いて
旅に来たのだから
1銭足りともやらないわ


少女はわたしが
小銭を差し出すと
黄色い歯をむき出して
わらった


その笑顔は
学が無かろうが
汚れていようが

親からぶたれて
働かされているのだろうが

少女のままの笑顔であった


もっと
別のよろこびに
あなたは笑えないのか

ポケットにあふれるほどの飴をもらったり

新調した服を身にまとったり

ぶたれた傷跡を神様が
そっと治してくれたり


あるわけない幸福に
目を背けながら
生きる町のひとびと


少女よ
あなたはいまごろ
どうしているのだろうか


満ち足りたこの
国に居て

我侭なこの子を抱きながら
ふと
よみがえる風景があった

あなたの
小さな手が
痣だらけで
泣いていたあの日



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