「煉瓦塀」・レトロ


どちらからともなく
温もりで語彙を埋めた朝があった

ゆるされぬ想いは
その朝のサイダー色の空の
もっと大きな果てへとながれていた

皮膚の色をおなじくして
すこしばかり
仕立ての良い服を着て
ほほもこけることなく
教育を受けられて

異国のひとを想う時

わたしは
恥知らずとおもった


日本に行きたいから近づかれている
心無いひとは
あやふやな愛に水を差した
寂しさに泣けないままに
ふともたれたい
そんな
あつい胸のひとと歩いた
真夏の煉瓦塀

あのころはまだ
パソコンも世界にはあまりなく
冷房に見入るその国の
電気街


繋がれた馬のひづめを蹴る音や

わたしを眺め
日本語でたらいや
野菜を売るひとびとがいた

煉瓦塀のむこうには
土ぼこりの貧しい路地があって
やせっぽっちのこどもが
鼻水を袖でふきながら
わたしを遠めに見ていた


あのころもし
あなたとであなければ
無神経な大陸の
並ばないバス停や
チェンジマネーを目当てに
ちかづくひとびとを
厭わしくおもったろう



語彙の無い
幸と

語彙の無い
不幸と


どちらを手招きしても
いつかきた分岐点


君は外人を愛し
君は学校を追われ
君はわたしを恨む


煉瓦塀のそばを
歩いたあのひ
そっと腰にふれた
花びらのような君のやさしさを


わたしは
わすれない




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